1980
March
Animage [pg. 44-47]



<1: 立体アニメの見どころは…。>
①レミの夢の中にでてくる、アルファベット文字の踊り
② ビタリスが投獄されたあと、レミと動物たちが納屋のまえで迎える明け方の空
③レミが運河のそばで見る夕焼け空
以上3つが、出崎さん語るところの立体アニメ・名シーン。じっくりその奥行きの深さを味わってください。
<2:「イタリアから逆輸入!!>
この映画、海外での評判がすこぶるいい。イタリアでは昨年クリスマスロードショーとして、日本に先がけて公開されたという。日本のアニメは暴力的”だという風評のさなか、うれしいニュースだ。
<3: アフレコは昨年11月6、8日に東北新社で……。>
●アフレコの苦労をレミ役の菅谷政子さんに聞いてみると
「映画版はテレビ版のダイジェストなので、映画にないシーンを自分の気持ちのなかでつけ加えて録りましました。とくにむずかしかったのは、ラストのレミのセリフね。 出崎さんからもあそこだけはたのむ”といわれていたのですよ」
<4: アーサーの声がちがう!!>
●アーサーの声を、テレビでは山本嘉子さんが演じたが、この映画では松尾佳子さん。スケジュールのつごうということだが、さて、きみはどちらのアーサーの声がお好みかな?。
Comments:
Tetsuo Katayama: この作品は放映当時は聴率はそんなによくはなかったんです。(編集部注・平9%)けど子どもが涙を流しながら見ていたので、親としてほんとうに感激した” といったような手紙をもらうなど、良質の作品としての評価はすごかった。おまけに、オランダ・イタリアなど海外でも放映され、視聴率は40%(オランダ)もあげた。これは「家なき子」という作品がもつ知名度、また立体アニメーションの美しさ、質の高さなどの証明でしょうね。こういう条件が重なり”そんなに評判のいい作品なら、ぜひ映画化を”と今回のはこびになったわけです。それに、じつをいうと、この映画化にもうひとつ意味があるんです。東京ムービーにはアクションアニメ映画のヒット作「ルパン三世」があります。でも、社としては、もうひとつの路線名作アニメ路線をぜひつくりたいと長年思っていました。たとえば、映画「宝島」のようなものをね……。つまり、この路線がいけるかどうかをさぐる、一つの試金石が、この「家なき子」になるわけです。映画の内容は、5本のテレビ用フィルムを、監督の出崎統自らぜんぶ見なおし3度絵コンテを書きなおし、また、シナリオも3度書きなおしました。だから、ぜったいに、テレビの焼きなおしといっ映画にはなっていません。もちろんアフレコも、やりなおしてありますし……自信作です!!ぜひ、見てください!!
Interviews:
Osami Dezaki:
できたてホヤホヤの(54・11/16完成) 「家なき子」を12月14日、試写室で見た。ヨーロッパの田園風景が美しい、詩情あふるる画像〟というのが第一印象である。さて監督の出崎統氏はこの画像をどんな想いで作ったか。さっそくインタビューしてみると
AM: まず〝テレビ”とのちがいは?
Dezaki: それは、盲目の少女・リーズやアキャン家の人々など、レミと深い交流をもったゲストキャラがでてこないことでしょうね。これは、この作品をとおし、ぼくのメッセージを、どう効果的に表現するかという問題とも深くかかわっていることなのですが…….
AM: というと!?!?
Dezaki: テレビでは、レミとゲストキャラたちとの小さなエピソードを積みかさねながら、ぼくの「家なき子」の世界を表現しました。でも、映画では、事実、事件といってもいいな。それを淡々と描き、ラストにながれるレミのメッセージ……「バルブラン・ママ、忘れませんぼく、あなたのことを。ぼくの運命がこれからどう変ろうとぼくがあなたの息子であることに変ないのです…(後略)」ここに、レミという少年へのぼくの想いをこめるというやり方をしたのです。つまり最初はつき放しておいて、最後にひきよせる・・・。
AM: なるほど。それで、レミがビタリスの死にあって涙をこぼすというシーンがまったくないわけがわかった……。
Dezaki: そう、テレビでのレミはビタリスの死をしらされて、泣きじゃくった。でも今回は、レミ側からみた死でなく、死という事実だけを描くことで、その重さを表わしたわけです。
AM: ところで、さきほどからお話にでている”想い入れ””出崎さんが描きたかったこと”とはどういうものですか?
Dezaki: 「家なき子」というと、レミという少年が苦しい旅をつづけながら成長し、やっと母親にめぐりあう、という”母を求める少年の話”というイメージが強い。でも、ぼくはけっしてそれだけの話にはしたくなかったんです。母に会ったその時点から、またレミという少年の新しい成長の旅がはじまるとでもいえばいいのか..。
AM: わかりました。最後に映画をつく終えていま感じていることを……。
Dezaki: 「家なき子」は、ぼくが手がけた作品中、一番気に入っているもの。だから、テレビフィルムのどこをけずって、どう作り変えたらいいか、ひどく悩みました。できることなら2部上映か3時間の長編アニメにしたかったなあ。
