My Anime #05 (August 1981)

pg. 9-16: Space Runaway Ideon

pg. 23-30: Mobile Suit Gundam II: Soldiers of Sorrow

pg. 31-34: My Anime Life – Yoshiyuki Tomino


人と人とのしのぎ あいから会得した 僕のアニメ経験論

MA. 最近、『だか 僕は…ガンダム への道』を著され たわけですが、今 日はそれに書かれ ていないお話をお 聞きしたいと思い ます。まず素直に、 アニメ作りの世界 に入られ、これまでどのように感じ てこられましたか?

Tomino. トータルに言えば、テレビ アニメをやるのは自分も含めて、い ろんな意味を含めてですが、落ちこ ぼれ組〟か、初めからアニメとマン ガだけが好きという、非常に限定さ れたタイプの人間が集まっている世 界だと思いましたね。ですから、こ の世界の空気になかなか馴染めなか ったというのが本音なんですよ。そ れだけに、自分の知らなかった人の 在り方を教えてもらったという意味 て、ずいぶん勉強させてもらえたと 思います。そして、この世界の仕事 を表芸にしてゆくためには、一体、 何と何とが必要なのか、そればかり を考えてきました。ただ、この世界 に入って痛感したことは、いろいろ な人間と接触していかなければなら ないのが本来の仕事であるにもかか わらず、それをしないですむという 動機から入ってきた方も、ややいる んではないかという気がしたんです。 それは、作品を作る上での危機感に もつながりました。つまり、よほど の天才でないかぎり、作るモノが偏 向してしまうんではないか、という ことです。 僕の場合で言えば、本当の意味で のストーリーテラーになれると思え ないし、オリジナリティを自分自身 に持ち得ないだろうなという気分が ありました。そこで外部の世界から 取り込みを図り、自分の作品にどう いうふうに反映させていけるかとい 積み上げの習練に努力しようと 思いました。しかし、少なくとも虫プ ロ時代の4年間では、まだその必要 性を骨身に感じませんでした。とい うのは、すぐに演出家になってしま ったので、そういう見方をしない恵 まれた環境だったんです。正直に言 えば天狗になっていたわ けですね。映画界なりア ニメの世界なりが持って いる徒弟制度については 十分承知していましたか ら、覚悟はできていまし たけど、すぐ演出家にな ってしまったから……。

MA. それで、フリーに なられた。

Tomino. の本に書いてあることに かなり近いゴチャゴチャがありまし て、この際、多少騙されてもかまわ ないから、一度は外を見てみないと 何も言えないのではないかなと思っ たんです。つまり、作品作りをして いく上で、よく現実性があるの、ド ラマ性があるのと言いますが、そう 難しく考える前に、人と人との関わ り合いを描いていくのが作品であろ うと……。その中で、自分自身がど ういうふうに打ちのめされたのか、 あるいは打ちのめされなかったのか といったことを根本的にわからなく てはどうしようもない。で、自分が 温室育ちだとつくづくわかって つまり、口で偉そうなことを言った って結局何もわからない、できない 人間だとわかったんですね。これは 辛かった……。 そして結局、またアニメに戻って きた時に感じたのは、人と人とのし のぎ合いをドーンとぶつけ合うこと だなと、つくづく思いました。たと えば、この作品を作るに当たっては プロダクションの社長を黙らせない 限り、自分の思っていることは創造 できないとか、局の担当者のこうい う点は半分聞くが、半分は聞かない といった一線の引き方をしていかな いと、自己主張というのは絶対にで きないことがわかりました。

MA. お聞きしていますと、富野さ んの製作作法というのは、すべて経 験論から割り出したものなんですね。

Tomino. そうだと思います。何をど ういうふうに描くかという方法論に ついては、映画専攻とかアニメ専攻 の人たちが一番聞きたいことなんで しょうが、そういうことは1か月か 2か月の学習で全部わかることなん ですよ。それよりもっと大事なこと は、そういうことではなくてという 部分を、自分で見つけていかない限 り、絶対に作品作りはできないんだ、 ということじゃない んでしょうか? じゃ一体、それは なんなのかと言えば、 人間というものをど ういうふうに見、そ れを自分が創りたい キャラクターの中にどう からめてゆくかというこ とに尽きるわけです。だ から、それがアニメに向 いているかいないかとい う判断は方法論ですむこ とです。僕自身、そういう ことが32~33歳の頃はあ まりよくわかっていなか ったし、今でもわかって いるかというと、やっぱり具体的な 方法論というのは、まだ見えない。

MA. 時、デザイン学校の講師を なさいましたが、その動機は?

Tomino. 動機というのはありません。 すぎです。その結果、得たことと 言えば基本的にはあの種の学校の存 在自体をナンセンスだと思いました。 しかし、なくてもよいかということ になると、これはあったほうがいい んです。なぜならば、ああいう学校 がないと若い人がとっかかりを見出 せませんからね。それでいて、現場 の当事者であるうちは絶対に出入り してはならない所だということを、 痛切に感じたんです。せこい発想で いけば、将来、自分のライバルにな るヤツに何もノウハウを教えてやる ことなんてないじやないかというこ とが一つと、本当の意味でのノウハ ウなんか絶対に教えられるわけがな いからです。おそらく、このことは 作品作りの根本じゃないかと僕自身 は信じているんです。

モノを創る行為は、 結局、人間として の練度を高める以 外にない!

MA. 本来、教えら れるものではなく、 身につけるもので しょうからね。

Tomino. 実を言い ますと、アニメは こういうプロット があり、これにつ いてはこういう描 き変えをしないといけませんよとい うことは教えられます。アニメはこ ういうふうにできていきますという 方法論は、字はきれいに書きましょ うね、ということと同じなんです。 むしろ、一番肝心なことは、 れている字が何を語るかということ です。このことは、伝わらない人に は百万語を費やしても完全には伝わ りません。伝わる人には、簡単に伝 わるんですが。それでいいんでしょ うが..。 ことアニメに関する限り、各種学 校が基本的にはナンセンスだと言う のも、そういう思い込みが僕にはあ るからなんです。じゃ、本来、何を やったらいいかと言うと、これはも のすごくはっきりしています。感性 を高めるということですね。それが 培われないのだったら、学校という のは必要でないという気がしてなり ません。ただ、学生時代という時間 はないよりもあったほうがいいとい うことにすぎないんですが、このす がというところが、こ れがいれ言い難い・・・

MA.  芥川龍之介が、作家になるに はどうしたらいいかという質問に、 国語と算数と体操をしっかりやりな さいと答えた話が残っていますね。

Tomino. 本当にそうだと思います。 僕は算数がわからなかったから今の 世界に入った(笑い)。ただ、モノを 創りたいという人に言えることは、 理論学から入るべきでないというこ とですね。現に、僕自信の学生時代 を振り返ってみて、大学の授業から 学んだことで生かしているのは100の うち2、3といったところです。 つまり、クリエイティブな作業は、 所詮、個人プレイでしかないわけで す。それでいて、マウンドに立って いるピッチャーとは違って、出たら 最後、降りろとは誰も言ってくれな い。ハッと気がついたら、完投 いるか倒れているかのどっちかです ね。それくらいすさまじいものです。

MA. なるほど。 そうすると富野さ んのアニメ・ドラマツルギーという のは、感性の練度に尽きるというわ けですか。

Tomino. それだけ、それがすべてで す。ナイーブさと言ってもいいんで すが、それさえあれば、キャラクタ 1一つ見てもいろいろな広がりで感 じられます。ところが、あまり専門 職化を志向すると、結局、ほどほど にというか、これ以上は脱皮できな いかたまりとなってしまうことが多 いですね。自分は”まだ柔らかいな” というふうに感じられるような感性 を保つようにするためには、アニメ ーションが上手くなったり、キャラ クターを描くこと自体が上手くなっ ということではないと思いま す。人間としての練度を高めない 限り、とてもじゃないがモノを創 るという行為はできない 特に、 ここ1、2年、ちょっと思うこと がありまして、自分自身の見えて いる部分がなくなってしまって、 殺伐としていやだなという辛さが あります。

MA. ところで、これまでいろい ろな作品を生み出してこられて、 それがファン、ことにヤングが共 鳴し、迎えられているわけですが、 その点、どう思っていらっしゃる のでしょう。

Tomino. こちらが作品に正しい思い 込みをしている時にしか反応してく れないことがよくわかるから、非常 に嬉しいと思います。間違った思い 込みに対しては、絶対に反応してく れません。それが実にありがたいん です。

MA. こわいくらいに反応が返ってくるんですね。

Tomino. ですから、外交辞令でもな んでもなく、本当に反応してくれる ようなキャラクターを創ることがで きる自分自身を、嬉しく思うんです。 作品を作り終えて、こうすればよか っと思って反省しているところを、 シビアーに突いてくる。それでも、 大筋が正しければ、逆にどんなミス でも、ファンは許してくれます。そ のくらい感情移入してくれているん です。それだけに、ダサイ部分を間 違ってもカッコいいとは言いません。 実際、決めポーズがいいからとか、 一枚絵がいいからということだけで は絶対に振り向いてはくれません。 そういう小手先のことは見抜く心眼 を、小学校上級生以上のレベルにな ったら持っているわけです。これは、 なにもアニメだけに限ったことでは ないのですが……。 つまり、若い人たちは、アニメも 実写のTVドラマも映画も、素材と しては、同じ受けとめかたをする。 まったく同列なんですね。大人が持 っているような”これはアニメだか らな”という分け方で見てはいませ ん。それは時代が変わったからとい うことじゃないんです。 ディズニー 商業化してきたという実績を含め て、アニメ自体の表現の練度もいつ の間にか高まっているんです。それ を当の制作者側が意外に気づいてい ないんです。

MA. 現実に、週に30本ものアニメ 作品がテレビで放映されているんで すものね。子供だって、それを全部 見ていたら何もできません。おのず と、自分に合った作品を見分ける目 が養われるようになっていますね。

Tomino. だから、絶対に馬鹿にして かかってはいけない。今の子供たち は初めて総天然色のマンガ映画を見 ているわけじゃないんですから・・・・・・ 色が付いて、絵が動いてりゃいいだ けだったら、チャンネルをビャーッ 回してしまいます。 それにもかかわらず、送り手の側 に子供の感じ方も一世代前の論法が いまだに横行しているのはどうかと 思います。僕に言わせれば、新しい 媒体については、経験論 というのはあり得ないん です。それが横行する は危険だと思いますよ。

MA. 子供たちの感性の 芽を摘んでしまう恐れが ありますものね。

Tomino. それは極度にあ るような気がします。今 の若い人はかなりタフで してね、そういう大人の顔色をわか っていますから、まったく無関係に やっていくみたいな部分があって、 僕らから見ると、むしろそのへんを 気づいてくれる大人が出てきてもい いんじゃないかと思います。

MA.「ガンダム」におけるニュータイ プという問題提起にしても、自分た ちの将来はどうなるのかという不安 があって、そういう心情とシンクロ ナイズしたと言ってもいいのでしょ うか。

Tomino. 単純に言えば、君たちもジ クジクしていないで、君たち自身が 今度生む子供たちに夢を託せばいい じゃないか そういう指向性を、 今の大人はあまりに与えなさすぎて いるような気がするんです。そうい う手応えのある情報というものを、 親子関係一つとってみても与えなさ すぎる。つまり、ハードインテリジ ェンスというんですか、確かな情報 ですね。子供たちはアニメ作品の中 にも、しっかりとした情報があれば、 間違いなく感じとってくれて るの ではないでしょうか。 それだけに、アニメに限らず、子 供たちの世界にも本物指向が起こっ てきています。それに応える意味で 本気になってかからなければならな いと思うんです。そうならないと、 日本映画が辿ったのと同じ歴史を歩 むことになります。僕は、この4、 5年の間にそういう危機が生まれ、 本数はいくらあっても、弾劾される 時代になるかもしれないと思います。 当事者の一人として、そうしたくな いですからね。本物をと言うのは簡 単ですけど、実際に作るとなると大 変なことです。

優しさと健やかさ 「ドラえもん」は僕 の憧れの世界

MA. 現在、アニ メ界では〝ガンダ ム以後”というこ とがやたらと言わ れていますが、富 野さんはどうお考 えですか?

Tomino. これまで 言ったことを含め て、自分の中でもっと具体的に言葉 を手に入れたいと思っています。け れど、それが〝ガンダム以後〟か以 前の問題か、となるとそれは論外で す。そういう現象の問題としては捉 えていません。 僕は今年で40歳です けど、考えてみるとあまり後の時間 がないんですよね。本当だったら、 30代の時に「ガンダム」みたいな状 況があったら、すごくよかったのに 半年ほど前までは思っていました。 しかし、これも時の運で巡り合わせ なんじゃないかという受けとめ方に なりました。そういう意味では、あ まり余分なことをしていられないと 思うと同時に、いつノタレ死にしよ うと後悔しない形での仕事をしてい こうと考えています。僕自身がはっ きりした姿勢を持っていないと、若 い人たちからスポイルされてしまい ますからね……。 だから好きなこと ばかりをしてはいられない。それで いて、僕の立場で言えばTVのシリ ーズもまだやりたいですし、映画も やれるものならやりたいし、小説も 書けるものなら書きたいし、とやる ことはいっぱいある、そう思いたい のです。 ただ、僕が大変啓発された時期が ありましてね。それはアニメ雑誌が マスコミに登場する前の年で、アニ メファンクラブの集いに初めて出席 した時のことです。 墨田区の公会堂 だったんですが、千人もの観客を見 て、あっと思った。ほとんどが中・ 高校生だったんです。正直言って、 その時から本気になりました。それ までは、アニメについては観念で真 剣だったにすぎなかったんです。 実 像が見えて、あーっ、アニメってこ れまでの作り方を変えないとマズイ んじゃないかな、とつくづく思い知 らされました。今でも、その時の気 持ちをずっと持ち続けていきたいと 考えています。

MA. 最後に、これからはこういう 作品を作りたいとか、こういうテー マのものを手がけ いといった抱負をお 聞かせください。

Tomino. 具体的には まったくありません。 ただね、今までの 話と全部違っちゃうかも 知れませんけど、僕が憧 れている作品があるんで す。「ドラえもん」 なんです。 つまり、それは 僕自身の作品世界 にないものだから かも知れない。し かし、アニメ作り をする以上、あの ような世界を作り たいと思うわけで す。その理由は、 ”優しさ”を描い ているからなんで す。最初に言った 人と人との関わり 合いは、それしか ないと思えるから です。あの「ドラえもん」の世界が 持っている基本的な優しさと健やか さは、チビちゃんだけのものじゃな い。それを平易に表現するというこ とはすばらしいことです。 だから、ああいう素材の作品を作 れるものなら

pg. 35-39: Adieu Galaxy Express 999

pg. 42-43: 101 Dalmatians, Dr. Slump, Sirius, 21 Emon & Doraemon

pg. 44: Yuki, Grick no Bouken

pg. 45-47: Sengoku Majin Goushougun

pg. 48-49: Manzai Taikouki

pg. 50-60: Japanese Anime Storm

pg. 62-78: TV Radar

Covered:

  • Kyoufu Densetsu Kaiki! Frankenstein
  • Doraemon
  • Manga Kotowaja Jiten
  • Muteking, The Dashing Warrior
  • Ojamanga Yamada-kun
  • Tomorrow’s Joe 2
  • The Swiss Family Robinson: Flone of the Mysterious Island
  • Tsurikichi Sanpei
  • Tiger Mask II
  • Ikkyū-san
  • Little Women
  • Kaibutsu-kun
  • Belle and Sebastian
  • Beast King GoLion
  • Astro Boy
  • Dr. Slump Arale-chan
  • Queen Millennia
  • GoShogun
  • Golden Warrior Gold Lightan
  • Tetsujin 28-gou
  • Ai no Gakkou Cuore Monogatari
  • Hello! Sandybell
  • Manga Hajimete Monogatari (Kenji Nagai)
  • Saikyou Robot Daiouja
  • Mechakko Dotakon
  • Ohayou! Spank
  • Manga Nippon Mukashibanashi
  • Yatodetaman
  • Hokahoka Kazoku
  • Kirin Ashita no Calendar

pg. 79-86: Star Graph – Yuji Mitsuya

pg. 87-91: Kami Densetsu Sadamoebius

pg. 93-96: JUN (Shotaro Ishinomori)

pg. 98-101: B&B 4-coma (Yuji Amemiya)

pg. 105-119: Space Battleship Yamato III Anime Comic

pg. 121-127: Space Warrior Baldios Character Sheet Collection

pg. 129-133: Space Warrior Baldio Scenario File

pg. 137-144: My Anime Information Corner

pg. 146-162: My Anime Jockey

pg. 163-173: Queen 1313

pg. 174-175: Anime World Information

pg. 176-178: Voice Actor: Ryusei Nakao

pg. 179-182: Animetopia

pg. 184-185: Legend of Voice Actors – Kaneta Kimotsuki

pg. 186-190: Hideo Azuma

pg. 191: Horoscope

pg. 192-193: Record Corner

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