Laputa: Castle in the Sky

1986

January

Animage [pg. 70-79]

August

Animedia [pg. 7-11]

POINT 1: のっけから映画の中へと見る者を引きこむ宮崎演出!!

「見どころはどこですか」ときかれるのが、いちばん困るのが宮崎監督の作品だと、高畑プロデューサーは言う。「いろいろな布石を打っていって、クライマックスに持っていく、といった作り方ではないんです。先月もお話ししたように、主人公と同じ視点に見る人を引きこんで、主人公と同じ体験をしてもらいたいといった作り方なんです。ですから、どの部分も、それぞれ高密度で『見どころ』と『そうでないところ』という言い方はできないんですね(笑)」しかし、だからこそ、ファーストシーンは、見どころだと言える。ここで、客は一気に『ラピュタ』の世界に入りこみ、全員がパズーに生まれ変わる。ムスカに捕えられていたシータが、ドーラ一家の襲撃を混乱の中で、飛行船から脱出するが、手をすべらせて落下してしまう。そして、飛行石の力で、ゆっくりと下降するところを、パズーが救う。「このふたりの出会いは、物語の始まりであり、また、パズーにとっても、シータにとっても、大きな出来事です。それだけに、大切に描いています。また、翌朝のさり気ないシーン、ハトにエサをやるところとか、食事を作るとか、そういったところも『ラピュタ』では、意味を持っています。人が親しくなるというのは、こうした日常の出来事からなんだと思うんです。共通の何気ない経験を、おろそかにはできないんですね」また、ここでは、空をゆっくり下降する少女、パズーの父のラピュタへの飛行など、これから起こる物語への期待が、いやが上にも盛り上がる場面が連続する。

POINT 2: いかに面白い悪役を作るか!? それは宮崎監督の一大テーマ

宮崎作品のポイントのひとつに、敵役をあげる人も多いと思う。『ナウシカ』のクシャナ、クロトワ、『カリオストロの城』のカリオストロ、『コナン』のレプカなど、個性豊かな連中が揃っている。「いつも宮崎さんは、映画を作っていく上で『いかに面白い悪役を作るか』を考えていますね。今回の敵役、ムスカにしても、なぜラピュタの不思議な力を手に入れようという野望を抱くのか―それがわかるキャラクターになっています。つまり、面白い悪役というのは、裏をかえせば、我々にも『わかる』奴なんですね。宮崎さんも、彼らに感情を入れて描かなくてはいけない、と思ってやっているはずです」ムスカは、冒頭から登場する。そして、シータ、パズーとからんでいく。彼の行動の根底には、ラピュタの力を手に入れたいという野望があるのは、すぐにわかるのだが、その奥に存在する「何か」は、ラスト近くに表れる。それこそ、意外な事実が隠されているのだ。「そのへんが、ムスカという男の面白さですね。また、見かけからいけば、ドーラさんも悪役かな(笑)。まあ、彼女は、生き生きと生きたいという人の典型ですね。笑いたい時は笑うし、ホロリとする時はホロリとする。あまり露骨にはやりませんが、見終ってから『ああ、いい婆さんだったな』と思えるような、そんなキャラクターですね」

POINT 3:「飛ぶ!」――それがいかに感動的なシーンかがわかる!!!

ドーラとムスカに追われたパズーとシータは、鉱山鉄道の線路から廃鉱に落下。この時、再び飛行石のペンダントが輝き、パズーとシータは、空中をゆく。ここは、スリルの後のファンタジー。非常に印象的なシーンだ。「最初にシータが飛行船から落ちた時は、彼女は気を失っていたわけですから、ここで初めて空を飛ぶことを意識するわけです。パズーの方も、もちろん初めてで、彼は、オーニソプターを作ろうとしているくらいだから、もうワクワクしている(笑)。この二人の感動と、少しの恐れが、きっと感じてもらえると思います」また、このほかにも、ドーラとパズーがシータを救いにフラップターで飛ぶシーンや、雲の中で、タイガーモスとゴリアテが戦うシーンなど、さまざまな空の「顔」が描かれる。その高度感やスピード感は、まさに飛翔感覚だ。

POINT 4: 飛行石に秘められた夢と恐れそれはラストにはっきりする

この物語のポイント中のポイントが、天空の城と並ぶ飛行石。最初はファンタスティックな飛行を見せてくれる美しい石だが、なぜか、どこかに不吉なものを感じさせる。パズーとシータが落ちこんだ廃鉱にいるポムじいさんも、飛行石を捜し求めている一人だが、シータのペンダントを見て、恐れを覚える。「そうですね。ポムじいさんは、飛行石そのものに恐怖を感じたというよりは、そうした強大な力が、悪意を誘発するのではといった、人間の心に対する怖さを感じたんでしょうね。彼は、年寄りですから、人間の怖さも知っている。それに対して、パズーは、単に空への憧れで飛行石をながめている。恐怖なんて、ありませんね。この対照的な二人も面白いですよ」こうした、憧れに一直線のパズーは、まったく普通の男の子。ティディス要塞で、ムスカにあしらわれ、シータに帰れと言われて帰っていくパズーに、ある種のいら立ちと共感を覚える。「まったく普通の少年を描きたかったんです。彼が、とても強い男なら、要塞から帰ったりしませんよ。このお話を、単なる英雄物語にはしたくないんです」

POINT 5: 宮崎アニメ以外ではできない高さと加速感のアクション!!

宮崎アニメの特徴は?ときかれて、アクションの面白さをあげない人は、まずいないと思う。それは、単にかっこいいとか、スピード感があるからという理由だけでは説明できない。「アニメは二次元的には違いないんですが、そこに描かれる世界は、我々と同じ三次元です。特に、上下を使って『高さ』を出しています。落下する時には、加速感もある。そうした動きが、宮崎さんのアニメ手法の面白さでしょうね」たとえば、パズーとシータが線路から落ちるシーンの高さは、目もくらむといった表現がピッタリだし、その前の、追跡シーンも、車のスピード、汽車のスピード、そして、人間の走るスピードと、それぞれ肌で感じさせてくれる。また、フラップターから見た、流れ去る地上の風景の高度感やスピード感は、ジェットコースターなみ。こうした、さまざまの動きが、すべてポイントだと言っても間違いではない。「本当に、わずか一瞬でも力を抜けないというのが、宮崎さんの作品ですね。クライマックスとクライマックスのつなぎシーンなんて無いわけで、全部が意味を持っていますから、それはもう大変です。最初に絵コンテを見た時、スタッフの一人が『これ、本当に全部やるの?』って言ってました(笑)。結局『ラピュタ』という話は、ストーリーを話すだけでは、あまり面白くない(笑)。フィルムがつながって初めて、出来上がった空間が力を持ってくるといった作品ですね」

POINT 6: 炎、爆発、ロボット大乱闘!!まさに中盤のヤマ場がここだ

ムスカに捕えられたシータが、家に伝わる呪文をとなえると、空から落ちて来たといわれるロボットが動き出す。このシーンは、それまでのどこかファンタスティックな画面とは一転して、すさまじい迫力! ロボットの破壊力に、シータは恐怖を感じ、まさか、ロボットが味方とは思わない。ムスカは、シータを追い、将軍は、この事態を収集しようとする。そして、パズーは、ドーラたちとともに、空中からシータ救出にむかう。「ここは、シータ、パズー、将軍、ムスカ、そしてロボットが、それぞれ別行動をとっていながら、一つのものにしなければならないシーンで、五つの筋の同時進行といった大変なところでした」ここは、まさに見せ場である。全体の中でも、必ず印象に残るシーンだ。特に、パズーがフラップターから逆さにぶら下がり、シータを塔から救出する場面や、要塞の砲に撃ち抜かれて倒れるロボットの悲しいシーン、主導権を握ろうとするムスカに、並々ならぬ意志を感じるのもここだろう。「飛行石の力のひとつ、ラピュタのある方向を示すというのも、要塞のシーンで出てきます。飛行石の先が指す方向に、ラピュタがあり、彼らは、みんなそちらへ向かうことになります」そして舞台は、天空の城へ!!

POINT 7: 天空に浮かぶ城ラピュタでのキャラの活躍と大がかりな謎

燃える要塞を後に、ゴリアテが出発し、シータとパズーも、タイガーモスの新乗組員として、ラピュタを目指す。そこは、パズーの父が“竜の巣”と呼んだ、高くそびえる雲の峰のむこうにある。巨大に発達した低気圧の雲の上での戦いや、シータとパズーの乗るタコの軽々とした動きが目につく。そして、ついに、我々の目の前に、空に浮かぶ巨大な城が現れる。「シータは、自分が何者なのかを知りたい。それでラピュタへ行くわけですが、シータ一人では無理なんですね。で、パズーがいる。彼は、ラピュタや空への憧れが行動の要因です。まあ、このへんが、宮崎流です。それと、なぜムスカがラピュタにこだわるかが、この後明確になります」ラピュタは、石造りの巨大城。青々とした木々に囲まれたそれは、見る者を圧倒する。しかし、ムスカが野望の対象とするような、巨大な力は、最初は感じられず、逆に、野原に咲く美しい花や、小鳥や、それらを世話するロボットの姿に、ホノボノとした想いを味わうだろう。「この後の、ラピュタの中枢もそうですが、最近はやりのメカニックなSF的風景から抜け出しています。過去に作られた作品とそっくり同じだと言われるのが好きな人は別にして(笑)、やはり、何か新しいものを作りたいですからね。我々は」ラピュタには、いったいどのような秘密が隠されているのだろうか。パズーとシータは、いよいよ城の中の中枢へと入って行く。そこには「飛行石の力」を手に入れようとするムスカが待っている……。そして、君は必ずラピュタの中でシータが味わう驚きを、パズーが経験する冒険を、あたかも自分自身が演じてるかのように、新鮮に感じるはずだ! さあ、夏休みは『ラピュタ』しよう!!

PULUS 1: 絶対に見すごせない宮崎アニメの名脇役

パズーとシータが、ドーラ一家から逃げる前半のポイントで、彼らを助けてくれるのが、パズーの親方とおかみさん。ドーラの息子が、その筋肉を誇らしげにふくらませ、シャツのボタンを飛ばせば、親方も同じように、シャツまでビリビリに破いてしまう。すると、おかみさんが「誰がその服、縫うと思ってるんだい?!?!?!」とくるから大笑い。彼らもまた『ラピュタ』の中では、欠かせない名優たちである。「主人公を取りまいている人々を描くのは、なぜ主人公がこういう気立てのいい人に育ったのかを描きたいからです。パズーを支えている人たちは、いわゆる庶民です。そして、やはり気持のいい人たち。パズーの優しさや、気立てのよさも、こういう人たちの間でつちかわれたものなんですね」ともあれ、このシーン、さらに親方対ドーラ一家の大立回りは、必見の面白さ。西部劇の酒場のケンカのように、カラッとして、どこかお祭気分がするのだ。

●併映● 名探偵ホームズ

テレビシリーズが終っても、ファンが去らない作品というのは、なかなか無いが、この「ホームズ」は数少ない、そうした作品の一つ。今回は、準レギュラーのミセス・ハドソン大活躍。「ミセス・ハドソン人質事件」では、モリアーティー教授に誘拐されたものの、教授のアジトの大掃除をしたり、料理を作ってあげたりと、その優しさをいかんなく発揮。「ドーバー海峡の大空中戦」でも、墜落した郵便機のパイロットを救うために、大オノを振り回すといった意外さ。とにかく、見て笑って、感動してください!

September

Animedia [pg. 125-129]

Newtype [pg. 4-11]

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