1980
January
Comment [for Toward the Terra, Animage]:
SFというと、ファンはすぐに機械的なコンピューターや直線的メカを思いうかべるかもしれない。そして、そういう人は、この映画のはじめのほうは、SFに見えないかもしれない。この作品は、いまの地球の状態からあまり飛躍しない舞台(アトラクシア・教育都市)からはじまる。現実の地球をベースに描いています。反面、地球をゴツく、直線的にした。これは、人間が人間性を失い、感性にすぐれたミューが人間的に描かれるという、この作品のテーマとも関わりがある。このミューの人間性を出すには、メカを全面に出さず、ファンタジックなものにしたほうがいいと思った。つまり、丸っこくてファンタジックなミュー側と、直線的でゴツイ人間側の対比となります。これは、見るものの視覚に直接うつたえかけるもので、とてもわかりやすくなっていると思う。下の絵のマザー・コンピューターも人間に指令を与えるという、むし生き物と考えたほうがよいものなので、生きている要素とメカニックを同居させたものになっている。いまは、ふんだんにでてくる”宙”などの設定・色・イメージなどを模索の状態で、ぼく自身はSFの経験はないが、むしろ意外性がでるのではないかと思っているけど、ま失敗する可能性もある(笑)。宇宙などもノーマルなものではなく、いまの既成概念を変える“宇宙”にしたい。
February
Comment [for Toward the Terra, The Anime]:
「今回、初めてSF的な作品に挑戦してみました」土田さん。これまでは、「龍の子太郎」「長靴をはいたネコ」「宝島」などの名作路線での仕事が多く、今度の「地へ…」では、百八十度の方向転換で、初のSFものを手掛けます。「じつは、僕は、メカに拒否反応のある人間なんですけど……」しかし、その豊かなイメージの広がりを見込まれて、美術担当への起用となりました。「同じSFものでも”ヤマト”や”999″と違って、視覚的に明確な舞台がないので、試行錯誤の連続ですが、それだけ、これまでの機械的なメカを飛び越えて、もっとイメージを大切にしたものが描けるんじゃないかな。SFの新しい可能性を引き出してみたいですね」SFの可能性、というより自分の可能性に賭ける土田さんは、ロマン多き男。きっと壮大で幻想的な世界を描き出してくれることでしょう。
May
Interview [for Toward the Terra, Animage]:
土田勇美術監督ー長靴をはいた猫、どうぶつ宝島、長ぐつをはいた猫・80日間世界一周、 龍の子太郎などの美術を担当。SF初体験。
Q. SFがはじめてでは資料などだいぶお読みに?
Tsuchida.「それ これが、ぜんぜん。いまさら資料 見ても遅いですよ。あくまでイメー 勝負です。 “龍の子太郎”のよ うな昔の世界も地球へ…”のよう 未来の世界。 想像の世界という ことにおいては同じ。ようするに、 いかにもっともらしく描く かということですね。でも、 こうして 話を聞いて くれるのはありがたいです む。以前は単なる背景だけ でしたから…..。一つの絵、 一つの映像文化として定 着しつつあるということ でしょうね」
Q. 背景の枚数が600枚と いうのはふつうの作品に くらべて少ないですね。
Tsuchida.「そう、強というとこ ろ。でも、それだけ密度 はでています。きょう、 ラッシュを一部見たんで すけど、発想は飛躍して いても絵に説得力があり 耐えられる画面になっ いると自分では思ってい ます。力のある映像にし たいですね」
Q. いくつか、いままで にない宇宙空間がでてく ると聞きましたが…….
Tsuchida.「ええ、特殊な宇宙空間 が数種類でてきます。そ うじゃないと、ナスカから地球へ、 長いこと旅した感じがつかめない」
Q. たとえば?
Tsuchida.「口ではちょっと説明できないけど、 ホタルがとんでいるような宇宙空間 などが……。 ふつうの銀河系もでてきます。」
Q. コンピューターも、ちょっと変 わっていますね。
Tsuchida.「コンピューターが人間を支配する 時代、そういうときのコンピュータ ーはどういうものになるんだろう? という最初のカベがあった。 う、生命をもっているんじゃな いだろうか….そうするといま までの機械的なものでは合わな い。メカだろうけど生きもの・・・。 ここまできて、完璧なコンピュ ーターというのは、人間のなか にあるだろうと、恩地監督のサジェ ッションがあった。つまり、脳・目 ・耳などだ。そうして生まれたのが この(写真上) コンピュータ」
Q. あと、この映画の見どころを…。
Tsuchida.「ミューの母船が光を放ち、旅立つ ところなど、動画1000枚をつか い、じつに壮大な感じ。そのとき、 旅立ちの曲がかかる ほかにもたくさんあります」
Q. 思念波の処理は?
Tsuchida.「不可思議な画面。攪乱さ れているだけだから、客観 的に見ることはあり得ない。 感じさせられている側のカ メラショット中心となる。 この映画は“驚き”が随所に 出てきます。演出的にも映 像的にも、あれっ?と思 うような場面がいくつもあ と思う」
Q. まったく、はじめて出 会ったスタッフの印象は?
Tsuchida.「須田正巳作画監督の絵は、華麗で はないけど、底力のあるしっかり 絵だと思う。恩地監督はアニメを 大きくとらえ、オレならこうすると いう要求を現実的妥協なしに出して きた。大変苦しんだが、やってみて、 何だできるじゃないか、ということ が多かった。 非常に得るところも多 く、とにかく、知らない同士の人間 関係の緊張感を乗りこえたときにで てくるものを信じてやってきたつも りです。単なる思いつきでは絵をか きたくないし、目新しいものをとく においかけていたわけでもありませ ん。結論をいえば、不可思議が実在 感をもってくれれば成功だと思って います。最後に、私がこうして話し ているが、あくまで美術スタッフ代 表ということで、みんなの総結集で でき上っている。とくに、背景担当 サブチーフの松本健治さんは、私が ふんい気で伝えたことを具体的に映 像化してくれた。ほかの美術スタッ フ5名も、じつに濃密に仕上げてく れたことに感謝しています」 (その他、背景とキャラクターを遊離 させない方法=くわしく記せないのが 残念など、この映画では、さまざま な試みがなされている。そういった面 からも期待作といえよう)
1981
May
Interview [for Queen Millennia, Animage]:
現実と非現実との落差
AM. 始が住んでいる時代にしては、 空地が多かったり、現代の下町的情 景のようですが?
Tsuchida. 始の住んでいる家ふきんに空 地が多いのは、家が爆破され、父母 をなくした始が、その後、焼けあと をおとずれたりしますが そのとき のさびしさなどを表現したかったん です。 そこ以外は比較的、ゴミゴミ としていますね。それと、たしかに 20年もたてばラーメン屋ふきんの街 並みもだいぶ変わっているはずです。 しかし、あえてそれを未来ふうにし ないのは、現実的な 常を生かして、 の後のSF的場面と の落差を表現するた めと、物語自体が、 ラーメタルの人間で ある弥生が地球に同 化していくス ですから、やはり 設定に人間味が必要 になってくるわけで す。あまりモダ 設定では、なにかよ そよそしい感じが ますから。そ 原作者の特徴として、 現実と非現実の世界 の背中合わせという モチーフがあります。 たとえば、ラーメン 屋の2階の押し入れにメカがつまっ ているといった設定。こう いったと ころを生がすという こともあります。
AM. SF物がお得意な ようですね。
Tsuchida. そんなことはありません。 『地球へ…』を担当したときも 非常に苦しみました。 今回もが んばるだけです。 手、とはいいながらも、 初のSF 「地球へ・・・」でも高い 評価を得た土田氏。 この作品で も大いに、力を発揮してくれる にちがいない。
July
Interview [for Queen Millennia, Animage]:
『1000年女王』の絵は、実に丹 念に美しく描かれている。SFとフ ァンタジーが同居する世界のふんい 気を巧みに演出している美術監督の 土田勇氏に、その秘密を聞いてみた。
AM. 舞台設定がかなり変化するので ふんい気作りも大変でしょうね。
Tsuchida. 背景は大きく3つのトーンに 分けて描いています。それは①下町、 ラーメン屋、 4畳半といった日常的 な舞台。 ②1000年女王の神殿や 古代人の墓地などの神秘的で幻想的 な世界。 ③天文台や地球防衛本部に 代表されるメカニックな舞台 の 3つです。
AM. 3つのトーンは実際にはどう 描き分けられているのでしょう。
Tsuchida. は松本零士さん独特の世界 ですから、原作のイメージをそのま ま伝えるようにしています。一見ゴ ミゴミした下町にも、それなりの美 しさがありますが、特にこの作品で はそれが重要な伏線にもなっていま す。下町のあたたかさのようなもの を感じ取っていただければ成功なん ですが……。 ②はあまりリアルにな らずに、神秘性を大切にして、ひと つのイメージで統一させています。 )はやや時代がかったメカかもしれ ません。現実の、 現実のメカはもっとコン クトに整理されているんでしょうが かなり多目の線で、メカニカルなイ メージを作っています。
AM. 3つのトーンが同時に描かれ ることもあるようですが。
Tsuchida. そのへんが『1000年女王』 のおもしろいところなんです。4畳 半の押入れを開けると、突然地底へ の通路が現れたり、地底の大空洞の 中ではクラシックな遺跡と超近代的 なメカが同居していたりします。
AM. 2クール以降は、原作で はまだ描かれてない舞台も登場 するようですが。
Tsuchida. ラーメタル星の都市など がいい例ですが、 このへんが るほうとしても、いちばんお しろいところです。画面に う少し後で出てきますが、水中 に没した都市という設定で、イ メージをスケッチしてみました。
AM. 土田さんといえば、最近では 『地球へ…』の美術監督をされてい ましたが『1000年女王』では特 にちがったやり方をしているところ がありますか。
Tsuchida. あまり意識はしていませんが、 『地球へ…』のときは、ほとんどが 現実にはない舞台だったので、終始 緊張感がありました。『1000年女 王』はいい意味での楽しさがありま すね。松本さんのSFには、ラーメ ンとか4畳半とか、人間っぽいとこ ろが必ず出てくるんです。自分を継 る部分があるので、ホッとしたり、 それだけ遊べる部分も多いですね。 今後は舞台の変化がますます頻繁 になります。トーンの描き分けにも ぜひ注目してください。
Comment [for Queen Millennia, Animage]:
今のところ、メインとなる舞台 は、下町と天文台です。ミステリ アスな話なので、なおさら身近な ところから始めようとしたわけで す。電車が走ることで生活感が出 るし、下町を何回も出すことで、 なおさら身近な風景となります。 『1000年女王』という作品は、 過去、現在、未来が同時に存在す るという奇妙なところがあって、 僕自身もそんなところが好きです。 古代の遺跡があるかと思えば、突 然ラーメン屋が舞台になったり、 筑波山にローカルな駅と1000 メートルタワーなんて、とてつも ないものが共存していたり、言い かえれば広い舞台を持つ話なんで すね。美術の役割というのは、世 界を変える仕事です。色いろな世 界へ見る人をつれていくのが、存 在価値だと思っています。見てく れる人に、期待とおどろきを与え られたら、成功だと思いますね。
December
Comment [for Queen Millennia, The Anime]:
よく背景とデザインを同一視する方 がいるようですが、アニメーターが動 画→原画→作監と直結しているのにく らべて、背景とデザインはちょっと世 界が違います。いわば、背景は指定さ れた世界、デザインは生み出す側とい ったふうにです。背景は原図がありま すがデザイン 美術はないものを作 りあげる仕事です。もちろん、両方で 活躍される人もいますが・・・・・・。 さて、このふたつの分野を説明する というよりは、今から美術デザイナー や、背景を目ざす人にアドバイスしま しょう。まず、基礎描写力のある人、 豊かな発想を持つ人、新しいものを創 造できる人ということになりますが、 もって生まれた才能もさることながら、 目標めざして努力してください。また、 背景を目ざす人も見本に忠実というだ けでなく、主張のあるものを描いてほ しいと思います。
