1982

July

Interview [for Mecha Combat Xabungle, My Anime]:

MA. 「ザブングル」で、演出をなさった回は?

Suzuki. 第11話「追いかけて、追いかけて」か ら「ザブングル」に加わったのですが、第11 話絵コンテ、第14話「ティンプ、悪あがき」 演出を担当しました。

MA. 感想は?

Suzuki. 勉強になります(笑い)。

MA. 今までやられてきた作品は?

Suzuki. サンライズでは「トライダーG7」「ダ ルタニアス」、最近では日本アニメの名作もの 系で「ワンワン三銃士」「クオレ物語」などで すね。

MA. 絵コンテ・演出の作品に占める比率と いうのはどれくらいなのですか。

Suzuki. 作品によっても違いますが「ザブング ル」の場合は絵コンテが80%と言ってもいい と思います。

MA. では残りの20%で演出が担う役割は? x:より「ザブングル」らしい”世界〟を 作るために目を光らせることですね。

MA. 具体的な作業にはどのような?

Suzuki. コンテがあがってからは、作画打ち合 わせで内容的なこと、つけたい演技について の打ち合わせをします。そして作監打ち合わ 作品全体の流れでの作画上のポイント を伝え、絵的に難しいカットなどもお願いす るわけです。そして一番のポイントとも言え 作画チェックですね。この前にバンクシス テムなどの設定発注が入ります。そして作画 チェックでは描き違いのような単純なミスか ら、演技違いなど全てリテークを出すんです。

MA. そこでのポイントをもう少し詳しく。

Suzuki. 設定ミスですね。例えばアイアンギア ーのホバーの砂煙、これは前にも出なければ おかしいですよね。仕組みを知っていれば分 かるような力学的なこと、あるいは物理的な こと、そういったことではでたらめはやらな いということですね。

MA. なるほど、それで次のお仕事は?

Suzuki. 設定あわせです。 これはレイアウトと 作画と合わせてミスがないかを調べるわけ です。 ここらへんが一番手間のかかる作業で すね。そして美術、色指定との打ち合わせ、 それから編集、アフレコ、ダビングと続きま す。一つの話ができ上がるまで、面倒を見る わけですね。

MA. アフレコではどんなことを。

Suzuki. 主にニュアンスの違いを伝えることで すね。それと当然ながら、絵の上がってない 部分もあるので、そういったところの説明で すね。

MA. 鈴木さんの場合、映像面と音声面とど ちらにウエイトをおきますか?

Suzuki. やはり映像主体ですが、音楽だけ、効果 音だけで聞かせるようなやり方にも関心持っ ています。第14話では、フル装備のザブング ルがアイアンギアーから飛び出して行くとこ ろなどは音楽だけにしたのですが、ジロンの 決意みたいなものが表れて、自分では成功し たと思っています。

MA. 絵的な面で、第14話の中の印象深いシーンは?

Suzuki. やはりフル装備のザブングルが、ホバ の力で飛び上がろうとするカッコなんかい いですね。

MA. 鈴木さんが、演出で特に心掛けている ことなどありましたら。

Suzuki. アニメは実写とは違います。同じよう にやろうとしても、その効果は出ません。だ から、より”それらしい”ものを作ろうと。 嘘を本当に見せることを心掛けています。そ れに世界” ですね。メッセージがなけれ ばいけません。

MA. やりたい作品は?

Suzuki. ミュージカルとか童話っぽいもの。毒 にも薬にもならないようなものがいいですよ ね(笑い)。

MA. 第14話の演出上のポイントは?

Suzuki. あの回は、ひたすらティンプとジロン 追いかけです。だからそのテンポですね。

MA. アイアンギアーのシーンなどは?

Suzuki. 僕の編集経験の中では、一番つめ込ん だくらいと短くし、わからなくなるんじゃな いかと思いもしたんですが、あれでよかった んですね。アイアンギアーのシーンは、気分 としたら、まだつめてもよかったと思ってい。 ます。

MA. 他の作品を見る時の演出家の目”は どこへ向きますか?

Suzuki. カットのつなぎ方、それと一本の話と してのテンポですね。

MA. 今回も「コナン」のパロディー風のシ ーンが出ましたが、そこらへんは?

Suzuki. パロディーであっても、決して「コナ ン」ではないみたいな気持ちでやってま す。自然に起こるギャグ、行動が自然と笑い を誘うようなギャグを目指したいですね。

MA. 演技づけをする時、 一番楽しいキャラ は誰ですか?

Suzuki. エルチです(笑い)。

MA. あなたは”エルチ派”!! (笑い)

Suzuki. 女の子のほうが楽しいですね。それは 男が見た女の子なのですから、考えていくと 色々な発展があるわけです。

MA. 今日はどうもありがとうございました。

September

Comment [for Mecha Combat Xabungle, The Anime]:

富野監督の『ザブングル』 のとらえ方は”価値観の相違〟 だと思います。僕自身が、惑 星ゾラの地球を見て思うこと は、これは現代の日本の象徴 ではないかということです。 荒涼とした部分を、ゾラとい う世界に投影したものだとと らえています。 そういう部分で、今の若い 人たちの夢は、ある意味では ふさがれているのではないで しょうか。それを描くために、 現代を舞台にするのではなく、 はるか未来に舞台をとばし、 グラという星を設定したんで すね。 ヅラには、人と人の信頼な んてありません。3日限りの 掟というのも、結局のところ 力の強い者――バイオレンス 優先ということでしょう。そ んな中にドまんじゅうキャラ の(笑)ジャンが出てきます。 これは、若い世代の象徴で すね。象徴としての人間関係 を、ジロンを中心に展開して いくわけです。ジロンのこだ わりというのは、人間関係を大事に していくことを考えるということです。 ジャンの生き方は、まず”個”と して生きることを考えているんです ね。今の人たちに目立つのは、個と してどうあるべきかというより、グ ループ行動が先に立ってしまうとい うことです。つまり、掟というか、 セオリー大事という感じですよね。 ところがジャンは、そのセオリー の3日間の掟を犯してまで、自分の 考えで突っ走ってしまいます。 昔で いえば体制”でしょうか(笑)。そうい う意味では、彼は正にアウトローですよ。 一方では、イノセントという存在が あります。これは、暴力をバックにし て、個を通してしまう まあ、 弱な人々ですね。自らは決して手を 出さずに、他人の暴力の影にかくれて いるわけですから……………。いわば、イノ セントは、現代の賢い大人の象徴です。 そこに、ジャンのような、自己の信念 を持っている人間が突っこんでいっ た時、イノセントは対抗しうるかと いうことな んです。 また、ジ ロンのよう 人間は、 周囲を引っ ぱっていく んですね。 そういうふ うになった 時には、世界そのものが崩壊してし まうこともありうるでしょう。 こだわるということでは、エルチ もそうです。文化に対してのこだわ りがありますね。この個の主張に対 して、プロポピエフたちは引きずら れていくわけです。

October

Comment [for Mecha Combat Xabungle, The Anime]:

鈴木「みなさん、イノセントと惑星 ゾラについて、いろいろ予想なさっ ているようですが、ほぼ間違ってい ないと思ってくれていいんじゃない ですか? イノセントが人類再生の 鍵を握っているのも確かだし、それ に対して、何らかの形でジャンも加 わっていくでしょう。 『ザブングル』も後半に入って、こ れからイノセントの秘密が、ひとつ ひとつ解明されていくでしょうが、 それがいつ、どういう形で、という のは、監督の富野由悠季)さんの 描きかたしだいですね。」 今のところは謎だらけの『ザブン グル』だが、すべてを見終わった時 に「あ、なるほど。そういうわけか」 と納得できるだろう。ましてや、富 野作品である。かなりの大じかけを 期待していていいだろう。 ところで、脚本を書く上で、惑星 ゾラの世界ならではのポイントとい うのはあるのだろうか。これも、鈴 木良武さんに聞いてみた。 鈴木「そうですねえ…。 ひとつい えることは、言葉(セリフ)を、ジ ロンたちゾラの連中のレベルに合わ せていることです。ああいう世界で “愛”だの”神”だの、または〝哲 学〟だのといわせても、ジャンたち にとっては、それ何なの?って感じ で、理解できないでしょう。そうい うところには、注意していますね。」 さて、こういう惑星ゾラの世界が、 今後の展開でどうなって行くかも楽 しみなところ。ジャンたちの のごとにこだわる人間の登場によっ て、惑星ゾラの体制は変わりつつあ る。ジャンたちの運命も、それにつ れて揺れ動くことだろう。そのひと つのヒントと思われる部分が、第28 話『うたえ!戦士の歌を』から変更 された、新しいオープニングにもあ る。どういうわけか、エルチがただ ひとり、サンドラットの連中とは分 けられて登場しているのだ。しかも、 それまでのコスチュームとは違う服 (たぶん、イノセントの服?)で、 涙をパッと流しているのだ。あの エルチの涙は何のため? ひょっと すると、ジロンに対しての涙なのかも..? ともあれ、目が離せな い『ザブングル』。これか らのドラマはどうなる