1981
January
Animage [pg. 64]

「トム・ソーヤの冒険」のあとは、1月4日から「ふしぎな島のフローネ」がスタートする。原作は「スイスのロビンソン」(ウィース著)。内容はフローネという10歳の少女を中心に、南海の孤島に漂着した一家5人が、無人島での生活を切り開いていくというもの。今月はその具体的な筋立てを紹介しよう。
<物語>
主人公はフローネ。10歳の少女です。彼女には医師である父、家庭的でチャーミングな母、そして5つ年上の兄フランツと7年下の弟ジャックがいます。これが彼女フローネの家族・・・ おっと、まだいました。ジャックよりも大きなからだのイス、ジョンです。この1匹をふくめた家族5人が波乱にとんだ冒険をくり広げるのが「ふしぎな島のフローネ」です。さて、物語は最初、スイスを舞台にはじまります。ここで一家は生活し、父は代々務めてきた医師の仕事をしていました。ところが、ある日、父のもとに1通の手紙が届いたのです。フローネには何が書かれているのか、さっぱりわかりません。その手紙を見た両親は昼間だというのに書斎に入り、深刻な顔で話をしていました。あとから、手紙の内容はフローネにも知らされましたが、それはお父さんのイギリス人の友だちで、オーストラリアに住む人からのものだったのです。新しい国オーストラリアには医師がとても少なく、お父さんに来てほしいと書かれていました。医師としての使命感に燃えるお父さんは、そういうところでこそ、仕事のしがいがあるとはりきりました。しかし、スイスを離れたことがないお母さんは、フローネとジャックがちいさいこともあって反対。家族会議でも結論はでないまま。両親もまったくこの問題にはふれずに過ぎた数日後、なにもいわないお父さんに、お母さんは旅立ちの決心を告げます。
(先月号で松土PDを「製作」とご紹介致しましたが「制作」の誤りです。訂正してお詫びします。AM)
Comments:
Takaji Matsudo: 上記の物語のようないきさつのあったあと、一家はオーストラリア行きの船に乗りこみました。ところがこの船が途中で嵐にあい、沈没。船長はじめ、ほとんどの乗客は死んでしまいます。そんななかでこの一家は奇跡的に助かり、近くの孤島に漂着。そこで生活をはじめることになるわけですが・・・。ここからが本番。孤島に流れついた一家が、近代文明の力をかりず、なにもないところから自給自足で生活を築きあげていく姿を活気ある画面で描いていきます。ところで、この一家の柱はもちろん両親なんですが、10歳の少女フローネ、彼女の存在そのものも大切に描きたい。この作品では助けあう家族の愛情につつまれて、10歳のやんちゃ娘だったフローネが、島での生活を通し、やがて思慮深く、思いやりのある少女に成長していくようすもこまかく表現したいと考えています。すでに舞台になる南太平洋へもロケハンしました。孤島の自然描写はウソのないリアルなものになるはずです。(松土PD談)
February
Animage [pg. 57]

Yoshio Kuroda: 医者の父を中心にしたロビンソン一家が、ただ自分たちの心と身体をたよりに孤島の生活をはじめる。しかし、望んではじめた生活ではないだけに苦しいことは多い。まして一生孤島で生活するのかと考えれば・・・。そうでしょう? でもそれを家族全員が励ましあってつづけていく。その逞しさと家族愛を描いていくこと、それがテーマです。このテーマのな私は社会とか学校というワクから抜けたひとりひとりの本音をぶちまけていきたいと考えています。家族だけですからね、わがままも出るでしょう。でも、苦しいのはみんなおなじ。10歳の少女フローネでさえそう感じとり両親に協力し、生活をもり立てていくのです。頼もしいじゃありませんか。これまでアニメの中で描かれる父親像って希薄だったと思うのです。でも、このロビンソン一家の父親は文字通り大黒柱的存在。頼りになる。金八先生なんてはやってるけど、こんなお父さんがいたらな、と思えるような頼りになる父親像を描きたいですね。お父さんにもいっしょに見ていただいて……。世のお父さん、しっかりして!!”と激励したい。ともあれ、家族を思いきり描くには孤島での生活は格好。徹底的に体当たりでとりくみます。ただ、孤島の描写はたいへんでした。南国諸島に取材に行ったのですほとんど動物がいない。あわてて博物館に行って、存在の可能性のある動物を捜し登場させたり……。
Yoshiko Matsuo: 活発でかわいらしい、ちょっと男の子みたいな女の子ね。でも、家族を思いやる気持ちを持ってて、しっかりもしている。ただ、どっちかっていうと考えてから走るんじゃなくて、走り出してしまってから考えるタイプかな。このシリーズではめずらしく線の太い女の子だなと感じましたね。声はなるべく細くといわれています。感情はストレートに表現していいということですし。表情も豊かな女の子だから演じるのがたのしそう。今日、(12/16)が第1回目のアフレコなの。カぜひいてるからすこしよけいに緊張してるけど、がんばります。応援してネ!
Monthly Comments and Q&As
Animage
- January ’82: 前作である『トムソーヤの冒険』と比べても視聴率はよく『ふしぎな島のフローネ』という番組自体には満足しています。ただ、春ごろにメインスタッフのひとりが病気になってしまい、心配したり混乱したりで大変な時期もありましたが、若い人たちが情熱的にがんばってくれてなんとか乗り越えることができました。みなさんにかわいがっていただいた『ふしぎな島のフローネ』も12月27日でいよいよ最終回です。最近では「フローネたちは最後にどうなっちゃうんですか? 教えてください」というお電話やお手紙がファンの方たちから寄せられています。それは最終回のお楽しみに、といいたいのですが、たぶんフローネたちロビンソン一家とモートンさんや動物たちを乗せた船は無事にオーストラリアに到着すると思います。現在フローネの後番組である『南の虹のルーシーメイ』の準備に大わらわ。1月10日からはじまりますので、フローネ同様応援してください。 (Takaji Matsudo)
The Anime
- January:
Q: フローネの弟のジャックを演じている高坂真琴さんについていろいろ教えていただきたいのですが・・・。以前「エースをねらえ」の岡ヒロミ役をやっていましたよね。埼玉県富士見市 吉野昭美(15歳)
A: これまで出演されたアニメ作品は、吉野さんご指摘の「エースをねらえ」の他「アタックNo.1」などに出ています。出身は東京で、都立小山台高校を卒業した後、「劇団・青い実の会」に入団、その後「ユニオンプロ」に一時おり、現在は「俳協」に所属しています。生まれは、昭和25年3月22日。特技はスキー、スケート。それに変ったところで大阪弁が大の特技。現在「フローネ」以外でNHK教育テレビの「大きくなる子」の妹役の声をやっています。(Haikyō)
