1981
January
The Anime [pg. 44-45]

動物を主人公にしたドラマや小説はたくさんあるが、ジャック・ロンドンの『荒野の呼び声』こそ、動物物語の原点と呼べるものだろう。それは、動物本来の〝野性”にめざめてゆく犬の姿をとおして、動物と人間との交流のありかたを考えさせてくれるからだ。犬というのは人間が昔からかかわりあってきた、もっとも身近な動物だが、本来はやはり野性のもので、ただ人間に飼いならされてきたにすぎない。これは、そんな犬が人間の手を離れて野性の荒野へ帰ってゆくまでをリアルに追ったドキュメントタッチのアニメ作品なのだ。
主人公の犬バックは、最初人間に飼われていたが、ある事件をきっかけに荒野へ出ることになる。初めて体験する弱肉強食の世界で苦労しながら、バックは自然の掟を身につけてゆく。ということは同時に、野性本来の生き方にめざめることになる。愛情を持たない人間に酷使されて死ぬ寸前のところをソートンという人に救われたバックは、そこで人間との本当の心の交流を知った。しかし、ソートンが悪人に殺されてしまったとき、バックの体の中で再び野性の血が燃えたぎった。
ドキュメント風の物語なので、自然の背景を中心にした絵柄は、あくまでもリアルなタッチが強調される。大自然の中にあって、人間と犬、動物がどのように暮らし、どのように交流するのかという問題をモチーフに、〝動物への愛情〟の大切さを分かってほしい――そんな願いのこめられた作品でもある。※ここに掲載した絵柄は番組宣伝用のもので、放映時には背景の絵柄など多少の変更があります。
バックのほかに登場する多勢の犬たちもこの物語の主役だ。犬同志の葛藤や争い、闘いのアクションシーンもひとつの見どころといえる。言葉をしゃべらない犬の心情を、表情の変化だけでどのように語らせるか。そこが、作画監督らスタッフの苦心のしどころだという。
