1980
September
Comment [for “The Legend of Marine Snow”, Animage]: テーマの大きさにキャラが食われたというか、とにかく、脚本を読んだ段階でも個々のキャラの印象が薄くてね、設定のときも個性がつけにくかった。まず、これという主人公がいない。それと、どこから見ても悪役というものがいない。つまり、ほかのアニメと違って、シチュエイションが非常に複雑。それだけに、顔つきなんかも単純に色分けできないむずかしさがあるわけです。とくに苦労したのは海野広とゼルバード。海野の場合、もっとも出番が多くて、一見主人公ふうだけど、実際は進行役。だから、基本的には無個性なんです。ただ、黒子じゃないから表情は追わなくてはならない。もっとも出番の多いキャラが平凡で、しかも場面場面で表情にメリハリをつけるんだから、正直シンドかったですね、これは。一方、ゼルバードというキャラ曲者でね。一筋縄ではいかない。すべて私利私欲のためではなく、彼なりに人類の未来を考えている、という設定なんです。脚本を読んだだけではそのへんがつかめなくてね、極悪そのものの感じで描いてきたスタッフもいました。最終的には善悪はタナ上げして、とにかく大物感を出そうってことでまとまったんですが・・・。そんなわけで、一つのキャラを描くのにもずいぶん知恵と時間をかけたしだい。それだけに愛着もひとしお、という感じがします。
