1981
March
Interview [“Anime Star”, The Anime]:
120分の熱演!! いまライヴに燃えてるんだ!!
この人、真剣に芝居の世界に生 きてるんだナー そう思ったのは、 1月中旬、東京・大塚にあるジェ ルスホールで行われた「中尾隆聖 の120分」と題する公演に顔を 出した時のこと。 今回は、“ふぉーいんわん”の メンバーとしてライブ活動にも情 熱を燃やす中尾隆聖さんを、〝密 着〟って感じで(別にヤーらしい 意味ではないのです、念のため) 追っかけ回したあげく、芝居の稽 古から公演までつき合ってしまっ たってワケ。 この公演、中尾さんが自分のパ ーソナリティーで芝居を作ろう、 という目的で行われたんだけど、 ナント、2時間出ずっぱりの大奮 闘。ひとり芝居の「ダブルクラッチ」 では、やり場のない怒りを抱えた1 ・歳の少年の役を熱演、もうひとつの 二人芝居「プレイバック・フォアー 「ド」では、声優仲間の吉田理 保子さんを相手に、ダメな男 の現在と過去を演じ分けて、 そのキャパシティの広い個性 を観せてくれた。 「芝居をやっている時が、一 番充実してるときですね。僕 が舞台の仕事をやるのは、芝 居の中に、自分自身の生き様 っていうか、生き方みたいな ものが出せるからなんですよ。 この“中尾隆聖の120分” というタイトルには、僕が今 まで探してきた僕の世界を、 皆んなに観てほしいって気持 ちを込めてあるんです」
寂しがり屋だから仲間に囲まれてワイ ワイやって生きて来た だから今のボク がいる素晴らしいものそれは友達
舞台の話が先になっちゃった けど、では公演が終わったとこ ろで、お茶でも飲みながら、じ っくりインタビューを。 と、入った喫茶店で、御注文 は?と訊かれた中尾さん、 「オレンジジュースのホット」 ハハ・・・・・・なんか、最初から笑 わされてしまった。こういう人 なんですよね、普段の中尾さん って。ぜんぜん気取ったところ がないっていうか、すぐに仲良 しになっちゃえそう。 キミとボクとはお友達 そ んな親しみやすい人間味がある から、中尾さんには”友”と呼 べる人が多勢いる。 「友達っていうのは、僕にとっ て最高の財産なんですよ。極端 な話かもしれないけど、自分が 死んだ時に何人の友達が集まっ てくれるか、それが、僕の生き ている間の価値を決めてくれる んだと思う。」 友達っていえば、神谷明さん、 福沢良さん、内田直哉さんらと 4人でつくった小演劇集団 ふ おーいんわん”が活動を始めて から、もう3年にもなる。 「あれは、マージャン仲間が集 まったんですけどね。皆んな芝 居をやりたがっていた。それぞ 事務所が違うので、何のバックア ップもなしに、やりたいと思った時 に芝居をやる、ひとり反対する者が 出たらやめる、そんな約束で始めた わけですよ。最初は収容人員50人ぐ らいの小さな小屋からスタートして、 その時は30人ぐらい観に来てくれま したね。名簿を作って、それを頼り に広げて行ったんですよ」 その名簿も、今では3000人近 くにふくれ上がった。 仲間と一緒に 芝居をやりたい、そんなちょっとし たことをコツコツと積み重ねて来た、 それが中尾さんらしいところかも。 昨年の暮れ、”ふぉーいんわん” は、護国寺の天風会館で、つボイノ リオさんと曽我部和行さんを混え、 「つボイノリオ&ふぉーいんわん・ バイバイ80・バラエティ忘年会」を 開いた。ファンへの感謝をこめて… 「友達と一緒に芝居をやるっていう ことは、とっても刺激になるんです よ。僕はこれまで、いろんな友達か ら、様々なものを学んで来た。皆ん な、それぞれ自分なりの生き方を持 ってるヤツばっかりだから、冗談を 言い合ってる中に、なんか、そいつ の生き様なんかが感じられたりして ね。それがやっぱり、僕自身の芝居 にも大きく影響してくる。僕が、友 達を財産だって言うのは、そういう 意味なんですよ。ある意味では、友 達が今までの僕をずっと支えて来て くれたんだと思う」 なるほど。じゃ、ちょっとここら で、中尾さんの経歴について触れて みようかナ。昭和26年2月5日、東 京生まれで、本名は竹尾智晴 「昔は子役の仕事をやってました。 “劇団ひまわり”に入ったのが4歳 の時。モノ心ついた頃から芝居の世 界にいたって感じ。ラジオドラマの 「フクちゃん」で主人公の相手役の キヨちゃんをやってました。 中学1 年の時、「宇宙パトロール・ホッパ」 で主人公のジュンをやったのが、声 優としての初仕事でした」 早稲田実業に進んでからもテレビ や映画に出演するなど俳優の仕事を 続けていたが、その他にも仲間とバ ンドを作ってビア・ホールで演奏し たり、いろんなことをやったらしい。 しかし、中尾さんの青春のハイラ イトは、なんといっても、高校卒業 後の数年間にある。 「卒業と同時に、新宿の飲み屋街に スナックを出したんですよ。友達と 二人で、それまでアルバイトで貯め たお金を資金にして 家からの援助は全くなかったとい うから、若い頃から独立独歩精神で やってきたわけだ。 「でも、4年後に潰してしまって、 その後、あちこちのライブスポット で、弾き語りをしながら生活してい た時期もあります」 その頃、新宿に借りていたアパー トには、年がら年中、仲間がたむろ していたそうだ。 「僕はホントは寂しがり屋だから、 仲間に囲まれてワイワイやってた。 そのうち、ぜんぜん知らない人まで 来て、泊まってったりしてね(笑)」 当時の仲間の中に、歌手の尾崎紀 世彦さんもいたとか。 「あの人の声量って、ものすごいで しょ。カウンターで歌ってグラスが ビビるほどなんですよ。本物の歌手 なんだなって感心しましたね。だか ら、僕はもう、彼の前では歌わない ことにしてましたね(笑)」 考えてみると、養成所あたりで演 技の勉強をしたことは全くないんだ よね。とても、そんなふうには思え ないけど…。 「僕の周りには、いつ の時でも、いいライバ ルや仲間が多勢いた。 そんな連中と一緒にい るだけで、芝居や歌が 自然に身についたんで すよ。人とのつき合い が僕の演技や歌心を養 ってくれたんです」 中尾さんが、す っとひとり芝居を 続けてきた四谷の ライブスポット 「コタン」は、そん な仲間達の集う場 所でもある。 中尾さ んの周りには”友” の楽しい歌声が断 えない。
役者・歌手・そして…自分の存在がそこにある!!
ちょっと古風だけど、〝役者 さん”っていう呼び方が、中尾 さんにはピッタリのような気が するんだ。 「そうですか! 嬉しいですね 僕も”役者”っていう言 葉の響きが気に入ってるんです よ。声の仕事もしたり、歌を唄 ったり、DJもやったり、いろ んなことをやるんで、まあ、 わゆるタレントなんでしょうが、 やっぱり”役者”って言われる ほうが好きですし、自分自身で も役者”だと思ってます」 他にも、作詞や作曲もやるし、 ヤマハのポップスコンサートの 司会もやっている。役者・中 尾隆聖”は、あらゆる分野で活 動している。 「今はなんでもやってみたい。 様々な分野の中に“自分の存在” を見つけ出したい。だから、ど の仕事もおざなりにはやりたく ないんですよ」 ふぉーいんわん”が少しずつ 観客を広げていったように、中 尾さんも自分の世界”を、じ っくり作り上げて来た。 手造りの味 っていうのが、中尾さんのステージ の魅力なのかも……。今回の「ダブル クラッチ」は自らの脚色である。 「あれが4回目の上演なんですが、 演出の三上左京さんが19年目でよ うやく出来たな”って言てくれまし た。芝居を作るってことは、そうい う積み重ねなんだなあって、実感し ましたね。やっと自分の世界がひと つ増えたわけですから、いつまでも 大事にして行きたいと思います」 地味さと幅広さ、そのコンビネー ションが、中尾隆聖というパーソナ リティーを作っているんだ。 では、ここでちょっと日付と場所 を変更して、赤坂のTBSスタジオ 内へ 毎週日曜の朝(7時30分) TBSが放送している「にんげんク ローズアップ」(2月15日放送分) に登場する中尾さんを追って、録画 撮りの現場にもつき合っちゃおう。 中尾さんは、ギター片手にスタジ オ入り。中には、弾き語り用のマイ クと椅子がセッティングされている。 そう、番組の中で歌も披露してくれ ちゃうんだ。 昨年、待望のファースト・アルバ ム「NOW and FOREVE R」を出したばかり。そのLPの中 から「エピローグ・スポット」を熱 唱する中尾さん。それを3台のカメ ラがとらえて行く。”役者”はその 瞬間、歌手”になった。 「あのLPね、好きな歌を初めてレ コーディングするわけですから、も シッチャキになっちゃって。頭に 血が上って、スタッフと何度も喧嘩 腰になりながら作ったんですよ、ホ ント。でも、いいものって、喧嘩す るぐらいの勢いがなければ出来ない んじゃないですか。芝居に真剣にな るように、歌を唄う時はひとりの歌 手として、歌に真剣になりたい。声 優が出すレコードだからって、遊び 半分のものにはしたくなかったんで すよ」 芝居でも歌でも、唯のイベントで はなく、”自分の世界”と観客とが 一体となったステージをめざして行 きたいと言う。「20代の前半は、早 30になりたい。30になったら、き っと自分の芝居が出来る、自分の歌 が唄える」そう思って来たそうだが、 今年、その〝なりたかった”30歳を 迎えたばかり。 「今年は、コンサート活動をどんど んやりますよ。去年、ギター持って 仙台、東北をライブで回って来たん ですが、今年もぜひ、地方の小さな ライブハウスを回るつもり。それか ら、今まで30年間生きてきたことの “区切り”になるような活動を、い ろんな方面でやりたい」 4月には、科学技術館ホールで、 歌手として初めてのワンマン・コン サートを開く。しかも、これを皮切 りに、ツアーを組んで全国縦断コン サートを行うことになっている。 声の仕事は、新番組の「私立探偵 「ダンタナー」やアニメの「ヘッケル 「ジャッケル」に出演する。それか ら、NHK第2の昼(12時50分)か らの10分間DJを4月から担当 かなり忙しくなりそうだ。 あ、そうそう、忘れちゃいけない。 もちろんふぉーいんわん”も 3作目を用意してるそうだ。 「これからの1年間は、自分から忙 しくしちゃうんですよ。徹底的に動 き回ってみます」 そこから、また新しい中尾隆聖が 生まれるかもしれない。今までひと つずつ手作りで作り上げて来た中尾 さんの世界”は、いま、大きくは ばたこうとしている。
