Norio Kashima

1982

March

Interview w/ Hironori Nakagawa [for Combat Mecha Xabungle, My Anime]:

ギャグではない!! ペーソス溢れるユーモア・アニメだ!!

MA. 第一話が放映されたのを見た限りで は西部劇のようなタッチでしたけれど、 決定以前に他の案はあったんですか。

Nakagawa. 最初提出された案から二転三転 しています。どういう作品にするかとい う問題はギリギリまで決まらなかったん ですよ。放映された「ザブングル」は原作 が富野・鈴木で作った作品ですが、サン ライズの企画部から出ていた案とは、ほ ど遠いものになりました。

MA. 最初の企画では、スペース的なもので、 宇宙の開拓者たちが人口惑星に移民してい た。そこで外敵に侵入され、戦いの果て に地球に戻ってきて、地球でのドラマが 始まるという、まあだいたいそんなこと で、今のとはだいぶ違いました。 ジロンのかたき討ちとか、キャリング がザブングル奪回に賞金をかけたり、縄 張り争いなど、モデルになった映画とか小 説のようなものがあったのでしょうか。

Nakagawa. 誰かがフッと言って、それがひ とつの企画案として提出されていて、取 り上げられたというだけで、モデルらし い作品というのは何もないんですよ。

MA. 《ユーモア・ロボット・アニメ》とい うことで打ち出していますが、シナリオ を読んだ限りではストーリーがシリアス で、ユーモア・タッチとかコメディーやギ ヤグっぽい部分はあまりないのですが、 画面ではどのように表現されるのでしょうか。

Kashima. それは、演出の部分にものすご い比重があるんですよね。シナリオでは 見えない設定部分があるでしょう。例え ば岩がどうなっているかとか、そういう ことを考えるわけです。岩がもろかった らどうなるか。一人の男が走って来て岩 がもろかったら足場が崩れるだろう、と いうような部分にコミカルな動作が出て くるでしょう。わざとギャグを起こそう というのではなくて、人間の行動の中で 自然に生まれてくる動作とか、それに到 る手続きのおかしさを出すわけです。今 までのロボットものだったら、武器を簡 単に出せたでしょう。ところが「ザブン グル」だと、自分でウォーカーマシンを操 縦して、武器をつかみに行かせて初めて 撃てるわけですよ。だから、いさぎよく バッと出て行って戦いが始まったりして も、あわてて出たから武器を持たなかっ たりする。と、仲間の連中が武器をズル ズル引っ張って来るわけ。そういった手 続きのおかしさってあるでしょう。 それから、ウォーカーマシンはガソリ ンエンジンで動くわけです。すると、ガ ス欠というのがあるわけ。戦っている最 中に、ガス欠でパタッと止まってしまう こともあるわけです。今までのロボット 物との大きな違いっていうのはそこにあ るんじゃないかと思うんです。ロボット が、ある意味では自動車と同じ扱いなわ けですよ。今までのは、スーパーSFと いう感じだったでしょう。「ザブングル」 では、むしろガーンと引き戻した感じで ガソリンエンジンなんかでやるから、そ んなに高度なところまでいっちゃわない で、現状のコンピューターとかの技術レ ベルに、ほんの上のせした発達程度でや っているんですよ。だから、ロボットは あくまでも人間が操縦しなければまった く動かない。人間が降りてしまうと止ま ってしまうんだということが、すごく大 切な話になっているんです。

今まであったスーパー・ロボットではない自動車的機械感覚

Nakagawa. 今回のシリーズでロボットと言 わずにウォーカーマシンと言うのもそう いうことなんです。歩くマシン・・・自動車 的というか機械的なんです。噴射して自 由自在に飛ぶようなことはできないんで す。せいぜい20~30m、ジャンプする程 度でね。

Kashima. そして着地すると足場がやわら かいから、膝までズボッと埋まっちゃう こともある。で、足を上げさせなくちゃ ならない。そういう部分でコミカルな動 作が出てくるわけです。それと、ジロン の個性です。爆発的なバイタリティーを 持っているジャンの行動性を引き出して いくと、キャラクターがかもし出すおか しさが画面に出るということです。けっ してズッコケギャグのドタバタではなく てね。

MA. すると、今まで2スタでやっていた 作品とは、視聴者の年齢層もターゲット が変わってくるのでしょうね。

Nakagawa. そうですね。ターゲットとして は、下限は決めてないんですけど、上の ほうは中学生から高校の一年生ぐらいま でかな。 ザブングルは、あまりかわりば えしないけど、他のウォーカーマシンは 少なくとも2スタでやってきたメカとは 感じが違うと思います。

Kashima. うん。全然違うね。

MA. 違うと言えば、アイアン・ギアーが 変形したウォーカーマシンのばかでかさ というのも、他に例がないですね。

Nakagawa. 胸に二体、ザブングルが収容で きるというから相当大きいということで すね。ザブングルは二体あるんです。ジ ロンがどちらに乗るとしても、戦ってぶ っこわれるわけですよ。ハネが取れたり、 腕が取れたりね。それでパーツが必要に なれば予備のほうから取ってくるという 発想なんです。今までだと、せいぜいヒ ビが入るくらいで、かなりぶっこわれて も、次の回には直っていたけれど、そう いうのは「ザブングル」にはない。どう いうもので作られているか知らないけど 合金とかじゃなくて、鉄板という感じで すね。

あだ討ち話の陰にあるイセントの伏線を見逃すな!!

MA. 今までの洗練されたメカじゃなくて 払い下げのボロという感じですね。もと もと戦闘用ではなかったんですか。 採掘 機とか運搬用だったんですか。

Kashima. ウォーカーマシンはブルドーザ ーみたいなもんだと思いますよ。それの 改良型がザブングルでありギャロップな んじゃないかな。ザブングルはキャリン グの持ち物で、それをジャンたちが奪い 取った。あの世界はそういうことがしょ っちゅうあるし、縄張り争いなどもある から、なんか強そうなやつを置いとけば ニラミもきくし。もともとの土掘り用と してではなく、ザブングルは用心棒的に 出てきたんじゃないかと思うんですけど ね。

MA. 奪ったものを3日の間取り返されな かったら奪った者のものになってしまう とか、交易商人は手形を持っていなくて はならないとか、そういうことを決めた のは、作品の中では誰なんですか。やは ”イノセント”なのでしょうか。

Kashima. イノセント”に関しては、僕も まだ理解してないんですよ。富野さんの 頭の中にあることだと思うんです。で、 物語の中で法的機関は全然設けてないん ですよね。警察のような組織はないんで す。そうなってくると、自然に掟という ものが発生するでしょう。いわゆる村の 掟というようなものがね。イノセント” も、一般人に特別な教育をほどこしては いないんです。毎日を一生懸命に生きる ことだけに集中させているというところ があるんですよね。ジャンたちは”イ セント”が存在しているということは知 っていながら”イノセント”に関しては何 の疑問も持たない。それは、日々の生活 に追われているからで、〝イノセント”も 意識的にそうさせているわけ。それがス トーリーにからんでくるわけですよ。”イ ノセント”って何だろうと疑問を持つの は、やはりジロンたちで、その正体は、 ジャンたちが「何だろう、何だろう」と 追究していく課程と同時進行で明かされ ていくんじゃないかと。

MA. では、話が進んでいくと、”イノセン ト”の正体を解き明かすことにドラマの 比重がかかっていくのですか。

Kashima. 富野さんの意向を言うと、ジロ ンが親のかたきを追いかけていくという のは、ドラマの表面にすぎないんで、そ の裏にはイノセント”の持っている謎め いたものが、〝惑星ゾラ”にどう関係して いるのかというのがねらいみたいですね。

MA. かたき討ち”と“イノセント”は何か 関係があるわけですか。

Kashima. 僕もよくわからないのですが、 ジャンの両親のかたきはティンプですけ ど、実はティンプは“イノセント”から命 令を受けているんです。何をするかとい うと、混乱を起こしているわけです。戦 争がなくて平和になって、順調な生活が 送れるようになれば、みんなが”イノセ ント”に気づくでしょう。だけど、ティ ンプが流れ歩いて抗争を起こす種をまい ていくわけ。「あそこが戦力が弱いから縄 張りを取るチャンスだ」とか、言って歩 くわけ。ジロンも、ティンプを追いかけ ているから、いつも抗争に巻き込まれる というわけですよ。

MA. では、今まで のように大きな敵 があって、少数の 味方で立ち向かう という話にはなら ないわけですね。

Kashima. いわゆる 軍隊組織の戦いで はなく、小組織同 士の縄張り争いで 話は進んでいくわ けです。その辺に 西部劇的なところ もあるしね。採掘 機をめぐる戦いも あるし、というよ うな感じで話は進 んでいきます。

動いて”絵”になる湖川キャラクターはいわば性格俳優だ!!

MA. それで、制作のほうはどのくらい進 行しているのですか。

Nakagawa. まあ順調でして、原画は8話ま で上がってます。

MA. ジャンのキャラクター性も今までの 主役とは違いますね。湖川さんのキャラ クターは「イデオン」の毛色が残っている とは言っても、個性的で、ジロンだって ちっともスマートでもハンサムでもない と思うんですが、どこか魅力的ですね。 人気はラグに集中してるようですが、他 のキャラクターも個性が強い。

Nakagawa. 湖川さんに仕事を依頼した時点 で、すでにこのキャラクターでやりたい というのを持っていたようですね。今回 のシリーズに合っているかどうかは別に して、すでに頭の中にあったものをイメ ージして、それがそのまま出てきたとい う感じです。シリーズ用に打ち合わせと いうのは、あまりしなかったように記憶 してますよ。富野もほとんどノータッチ です。あのキャラクターは動いてみない と・・・というのが、見ている側にもあるよ うですね。

Kashima. あれは、動かした魅力だから。

MA. サンライズの第2スタジオが富野さ んを迎えたという ことで、今まで作 ってきた「ダイオ ージャ」路線とは 変わってくるんで すけど、作品的に、 あるいはスタッフ の反応などはどう ですか 中川 一部の人 は、とまどうとか 勝手が違うとか思 っているかもしれ ないけど、それが 大きな問題になっ ているとは思えま せんね。

Kashima. 作品的に は軽妙さが息づい ていると思うのね。富野さんの中にある シリアスなものが「ガンダム」「イデオン」 路線で、ああいう形でやってきた。今度 の富野さんの中で、軽さというか、ユー モアを入れて作品に取り組みたいという のが出てきたんじゃないですか。かと言 って「ダイオージャ」のドタバタさはま ったくない。

Nakagawa. 2スタ路線から完全にはずれた とか、完全に違うということでもないん ですよね。「ガンダム」と「ダイオージャ」 の中間みたいなつながりはあるんですけ ど、単に色相が違うのかな。それはチー フ・ディレクターの色相だからというこ とです。

MA. 「ダイオージャ」路線を昔から見てき 子供たちが成長してきたから、そのレ ベルに合わせたいというようなことは…。

Nakagawa. (笑い)。そんなことは思ってなか った。ただ、今回は一話完結ではないで しょう。だから見逃すと、たぶん話がわ からなくなる。

Kashima. ドラマ仕立てはマジメなわけ。 マジメなところはすごくマジメに作りな がら、キャラクター性とか他の要素での おかしさを出す。だからゲラゲラ笑える という作品ではないですね。

MA. 舞台設定を“惑星ゾラ”にしたという のは、地球ではいけないという理由があ るわけですか。

Kashima. そう。そこには秘密が隠されて いて、ティンプのことなんかも表面上は かたきみたいに見せておいて・・・という秘 密の部分なんですよね。見ていきながら 「どうなっていくんだろう」と楽しんで もらったほうがいいんじゃないですか。 制作の意図として、支配階級とか階 級制に関するメッセージがありますか。 もらったほうがいいんじゃないですか。

MA. 制作の意図として、支配階級とか階 級制に関するメッセージがありますか。

Nakagawa. 作り終わったときに、こうでし たということはあるかもしれないけど、 最初にこういうテーマで作りましたとい うのは押しつけになるでしょう。そうい うものは汲み取ってもらえるように作り たいです。楽しんでもらえればいいんで すからね。

June

Interview w/ [for Combat Mecha Xabungle, My Anime]:

マリア=島本須美、そしてキャラデザ イン変更の理由は? 今回から、「ザブン グル演出スタディ」の始まりだ!!! 第1 回は、第1話も手がけた鹿島典夫氏が登 場する。

MA. 「ザブングル」では絵コンテがス トーリーボードとなっていますが、絵コ ンテと演出とは違うのですか?

Kashima. ええ。僕の担当した、第1話、第 5話、第9話の中でも、絵コンテまで切 ったのは第5話だけです。

MA. では、どのようなお仕事を?

Kashima. サンライズの場合、オリジナル物 が多いためかもしれませんが、コンテに よって出されたイメージを、実際に絵に していく上での指示であり、チェックで すね。いかに見せるかという部分での、 現場の最終責任を負うセクションですね。 その意味では、担当した回には、他の演 出の方もそうでしょうが、これは自分の やった話なんだ、という所があります。 まあ、成功すればスタッフの力で、失敗 したら責任をかぶるのが演出ですね(笑 い)。家内制手工業ですから(笑い)。

MA. についてお話をうかがいたいのですが、 当初の設定とマリアのキャラが変わって いたようですが?

Kashima. ええ。あれは作画の佐々門さんと もう少しかわいくしようと(笑い)。理由 は、ザブングルの世界の中で、マリアを 浮かせたかったからなんです。それがで きればこの話は面白くなると思いました から。ギャグではなく、全体から滲み出 るユーモア”がたのしいんですね。あ のマリアの真剣さと、ジャンたちの生活 観の違いを際立たせようと。

MA. 声優は、クラリスで有名な島本須 美さんでしたが、何か意図でも? x鹿島 :いや、キャスティングは音響監督 さんが選ばれて、特に意図はありません。 島本さんは、勘が良くて、実にぴったり とやってくれましたね。

MA. 「ザブングルパーンチ!」とジロ ンが叫ぶところも楽しかったですね。

Kashima. 楽屋落ち的なネタですが、一連の ロボット物の逆手ですね。殴る前に相手 をおろしてますし(笑い)。声優さんも、 ロボット物なんだから、一回はこんなこ とやってみたいんじゃないかと(笑い)。

MA. アラストでマリアが髪を切ったのは どうなんですか?

Kashima. あのわざとらしさ(笑い)がユー モアだと思うんですよね。 ラストシーン までの、あそこまでやらなきゃ決まらな い、全体の持つユーモア感を、シャイに 感じるためには、完全にシメなければな らなかったと思うんですね。

MA. ほかに、特に印象に残っているシ ーン?

Kashima. やはりマリアがミス・ギャブレイを 殴ったところの、あのイメージシーン。 ですが、やはりイメージにと。オンエア でスタッフが笑ったんで、あっ、これは成 功したなと思いましたよ。マリアを浮か せることでかもし出すユーモアですね。

MA. キャラクターの中では、個人的に お好きなのは?

Kashima. かわいいといったらチルですね。

MA. エルチは?

Kashima. 面白いですね。エルチはやっぱり 本質的にラグと同じで、エルチ自身のカ コづけの部分と本質との葛藤が面白い と思います。エルチのそういう本質を一 番早く見つけたのがラグでしょうね。

MA. 第5話でのティンプの”カリオス トロ走り”は?

Kashima. あれはやはりティンプのキャラか 出てきました。ティンプってのは殴り 合いの最中でも、殴ったポーズがキマれば 一分でも二分でも続ける男なんですよね。 これはホーラも同じところがあり、要す るにカメラが向いたのを意識するという (笑い)。それであのシーンは、その前で実 は風が吹いてくるまで待っていてキメた んですね。しかし、そこまでいくとこの野 郎と思ったりして、コケさせる。が かしティンプの念頭には、とにかくころ ばんぞ!!! というただの一点があって… ・・・ああなるわけです(笑い)。二枚目だっ 三枚目なんだ。正義漢ぶってたって正 義漢じゃない。人間ってそうだと思います。 富野さんの作品は、キャラがストーリー を引っ張るところがすごく魅力ですね。 人間のからみ合い、摩擦の度合、それが 面白いわけです。そして、そのキャラの動 きの中に、“想い”までこめられるのがア ニメだと思うんですね。こんなにジャン

MA. ありがとうございました。

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