1979
December
Animage [pg. 33-38]



いずれおとらぬ熱狂的ルパンファンの4人が、タップリ時間をかけて「カリオスト口の城』の絵コンテを検討した反応と感想。(Four enthusiastic anonymous Lupin fans react to seeing the storyboard of the movie)
最初に歓声があがったのがタイトルバックのルパンと次元がカジノから大金を奪い逃げ出してくるところ。(写真上)
A. ヒザがなくて、足がピューっとのびてピューととんでいくところが特徴。
B. 軽々ととんでいくけど、でも、ちゃんと人間の重量感が残っているんだな。さらに、タイトルバックにつづいて激しいカーチェイス。
C. クルマが半分になろうがバラバラになろうが根性で走る(笑)。
D. もうすこしあとに、もっとすごいカーチェイスがでてくる。ガケ登ったり、林の中につっこんだり、谷底に落ちていったり。
B.. 林の中につっこんで葉っぱだらけになるのは『コナン』で、コナンとジムシィが意地をはってカケッコするシーンをクルマにおきかえた感じ。
A. 激しい動きの中でも、ユーモラスな場面があったり、登場人物の個性を感じさせたりするのが宮崎さんだね。
C. そう、クルマがまるで生きているように動く。
D. あらゆる場面にムダな動きはない。
B. ふつう、一つの場面に何人も登場するとひとりしか動いていない場面が多いけど、ルパンの場合、かならずそれぞれが動き、表情も変わっていく。
C. 個性のぶつかり合いがある感じ。
A. 人間だけじゃなく、このメカの見せ方もいいなあ。
(宮崎氏考案のオートジャイロ登場場面)
C. ルパン、次元の上空や、水面ちかくをとばさせている。
D. このヘリの性能や型を自然な形で見せているんだろうね。
A. 城に着陸してからもいいね。
C. そう、伯爵が降りてくるとき、ハシゴをもってきたり、服を人にぬがさせたり。 これはマニアにしかわからないと思うけど、第一次大戦のドイツ空軍の将校がこんな感じ。
B. 今回は宮崎さん自身登場していないかな?
C. 絵コンテじゃよくわからないけど、旧作ルパンの23話では、家にクルマが落ちてきて、食事中の宮”崎一家”が逃げまどうところがあったね。
B. あそびの部分だけど、あそんでそれがま生きるのが「ルパン」なんだな。
C. 城のカベをよじ登るとき、指をくわえて「風力2、な~んちゃって」 なんて場面あるけど、カベ登るのに関係ないと思うけど、こういう緊張した場面で、ちょっとしたしぐさができる。すごいと思う。
(と、突然、全員大爆笑)
A. これはケッサク。スゴイ!! (笑)
(ルパンが城のカベをよじのぼり、屋根の上で、 小型花火ロケットをあつかうところ。 右下の絵コンテ参照)
B. こういう信じられない動きを本当にしちゃう。 アニメのリアリズムといったものを感じる。
C. 先月号のアニメージュにも書いてあったけど、五右ヱ門の登場もいい。
C. よけいなことはいっさい、 いわない。
D. ルパンはいつも、クルマを運転していて、前からクルマがくると、ワァ~と騒ぐ。このへん。も、宮崎調がよく出ている。
D. 顔だけの芸で見せる。 大塚・宮崎コンビ健在! うれしいな。
A. 敵の軍団”カゲ”がルパンたちを襲うときの無気味さ、スピード感なども見のがせないな。
B. ”カゲ”がルパンたちのクルマに飛びのったとき、ふつう、クルマで振り落とそうとするけど、 クルマをかたむけ、壁にこすりつけて落とす。
C. そのへんも、リアリティあるね。
A. メカや銃などのリアリティとはまたちがったものをね。
C. あはは・・・・・・この宮崎さんのト書き、ケッサク。
(気を失ったクラリス姫を助けたルパンが、気がついたクラリス姫に顔をひっかかれたりするシーン)
B.「顔が悪いとそんする見本」か(笑)。
A. ルパンの困ったような、恥ずかしいような、うれしいような、こういうときのルパンの表情、大塚さんがまたうまい。
B. 絵で語れる強みだね。
C. 「女のにおいだ!!!」 って、ルパンがハンカチかなにかをもっているシーンでも、ワキで次元がクルクルパーなんてやっている。
A. こういうように、一つの場面で登場人物をいっしょに動作させてふんい気を出していくね。
D. 激しい出だしのあと、ルパンと次元がのんびりとカリオストロ公国を走っていくシーンがあるね。
C. ルパンがクルマの上でのんびりと「平和だねぇ~」なんていってる場面ね。(右の写真)
D. こういうところ、だまっていても、ドラマがある。
A. 灰皿がイッパイになっているところも、次元がヘビースモーカーだということがよくわかる。
C. カリオストロ公国に入って、廃墟をたずねたルパンと次元。 ここ、いつもの調子とちがいますね。
A. ルパンが廃墟に入って妙にマジメな顔して、思い入れている。こりゃ、きっと何か伏線になっているな。(そのとおり、さすがルパンファン)
D. ここの表現もいい。この廃墟の中にある取水口に流れ込んでいく水を、枯れ葉一枚がすいこまれていくのであらわしている。—では、最後に総論を聞こうかな。
A. 演出・絵に不自然さがない。
B. うん、無理してそうしている感じではないね。
みごとな〝静と動の演出べつに、ルパンはいつも、ニャハ~とかワギャ~などといっているわけではい。”静”の部分があってこそ”動”の部分が生きるわけだ。
C. 遊びの精神がなんともいえないね。
D. 遊んでいても、それがムダにはなっていないところがスゴイ。
B. 動きの中で表わしていくという、アニメを作る基本的なかまえというようなものが感じられる。
C. おとなの鑑賞にもたえられる作品になりそう。
D. 旧ルパンは、はやすぎたんだろうね。いまなら、わかってくれただろうな
B. 第1話でズラッとでてくるF1なんて、ブームになる何年もまえだったものね。
A. この映画、ルパンファンじゃなくても、十分に楽しめると思うね。
D. それだけじゃなく、見終わったらルパンファンになっているんじゃないかな(笑)。
C. それにしても、絵コンテでこれだけ動いているのもちょっとめずらしいんじゃないかなあ。
A. そうね、実際に映画みたら、もう、絵かってに動いていくって感じだろうね。
B. 原画の人、たいへんだろうなあ。同情しちゃう(笑)。
D. 演出がとっても高度な気がするしね。
C. これだけ描いてくれれば、あとは音楽さえよければ……。
B. 大野雄二さんならだいじょうぶ (笑)。
A. ぼくは旧作ファンだから、声はその当時の人のほうがいいけど……。
B. ぼくは新作もファンだから、いまのままでいいと思う。
C. それにしても、はやくみたくな ってきた(笑)。
A. ちょっとゾクゾクしてきた。
Production Staff Spotlight
Shigetsugu Yoshia
吉田氏は、旧ルパンには演出助手として参加、さらに新ルパンでは演出として、そのウデをふるっている。さあ、どこが宮崎演出の特徴といわれても、みなさんのほうがよくご存じでしょう(笑)。設定がストーリーに密接な関係があるし、メカにはめっぽう強いし…。この映画で宮崎さんらしいところですか?そう、流水口からルパンが城内に入り込んで時計塔歯車に巻き込まれたりしながら、ライオンの口に出てくるところ。クラリスの部屋にしのび込むときに空中大ジャンプするところなど、いかにも宮崎さんらしいなあ、と思いますね。そばにいて感心するのは、絵コンテの段階から人物と背景のトータルのものでの発想ができるということですね。どの演出家にもいえますが、とくに宮崎さんの場合はそれがいえますね。それから、ふつうなら、シリアスな場面があると、さらにシリアスに突っ込んでいきたくなるところを、シリアスギャグシリアスと無理せず変化をつけられるところですね。スピード感、タイミングなどどれをとってもみごとで、動く絵の中で、考えていることを画面にしていくことのできる人、といえますね。
Kazuhide Tomonaga
友永氏は、以前「未来少年年コナン」で外注として参加していた。特徴?基本的にカッコイイ人間は描かないということかな。ルパンにしろコナンにしろふつうの人間。2枚目じゃない人間が必死に何かやる、このあたりが見ている人をひきつけるんだと思いますね。ある条件のなかで、せいいっぱい生きるれは宮崎さん本人がそういう生き方をしていますね。そう、宮崎さんのチェックはきびしいですね。そのカットで何を要求されているかわからないとできません。ほんとに細かい動きや表情を要求されますから。コナンにはテレビという制限があったけど、たとえばカーチェイスのところなど、ふつうくりかえすようなところを、おしみなく動かす。枚数だけの問題じゃなく、コナンより要求されているレベルが高いですね。ぼくも12~3年やってるけど、こんなのはじめて。とにかくがんばります。
Kawauchi Hideo
河内氏は旧ルパンで原画、「未来少年コナン」でも原画として参加している。とにかく、やりごたえがありますね。アニメーションのおもしろさというものがあります。それがとても厳密に計算しつくされているところなど、すばらしいですね。宮崎さんのイメージどおりにやらなきゃいけないわけで、技量がないとついていけない。宮崎さんらしいところですか?クラリス姫に対する思い入れなどは”女は守るべきもの”という宮崎さんの考えがよくでていますね。コナンにおける、ラナに対する思い入れと、ちょっと似ている気がしますね。どんな作品になるって……とにかく、最近じゃめずらしいくらいよく動きます。テレビでは見られない、長編のダイゴ味が楽しめると思います。
“Answering Why Character Faces Have Been Changed” by Yasuo Ōtsuka
「キャラには個性が反映される」
キャラクターというのは、同じキャラクタ-表をみて同じものを描いたつもりでも、描人によって大きな差があります。たんに、うまいヘタのちがいだけではなく、描く人の個性が反映され、さらに、そのとき必要な演技上の解釈が加わりますから、そのままで画面に出すと、担当した原画の人によって顔や体つきがコロコロ変わってしまいます。いくらキャラクター表をよく見て描いても、このちがいはさけることができません。昔は、一本の映画の中でのちがいについて、いまよりずっとおうようでした。東映の「白蛇伝』とか『猿飛佐助』などは、その大半を森康二さんと大工原章さんのふたりで描いていますが、いまみると、同じキャラクターでも、ちょっと問題だなあと思うくらいちがつています。でも、これはあくまで作る側の問題で、一般の人はあまり気にしないでみていたものです。それよりも動き方がおかしいとか、ストーリーの展開がおかしいというほうが問題だったように思います。ところが、テレビがはじまったころから事情が変わってきました。急速な需要の拡大にともなって原画スタッフが大量に必要となり、少々経験不足でもどんどん投入せざるを得ない、そして、作品の質をまもるためにはだれかがそれをカバーしなきゃならないそんなところから作画監督という制度が生まれたのだと思います。もう一つ、あまり動かさなくなってきたので、一枚あたりの絵の完成度を高くしておかないと映画がもたない、というようなこともあったでしょう。テレビ局の人や一般の視聴者も、よし悪しの基準を”動き”よりも〝顔のちがい”に求める傾向があったりして、チェックの重点がしだいに顔の統一”におかれるようになってきました。テレビ作品では、スケジュール的にも”せめて”顔をなおすのがせいイッパイという事情もあって、作画監督という職種で、最低、顔のニュアンスくらいは修正して動画にまわしているわけです。
「同じ人が描いても”顔は変わる」
その統一をとる”作画監督でも、第1話のころと最終話のころでは、ずいぶんちがっ顔を描いているのがふつうです。これは、作監がキャラクターになれて上手になっていくだけではなく、仕事をすすめていくなかで、演技上、必要な表情がつけ加わっていって、キャラクターのハバが広がっていくことから起こるのです。クルマでも、よく新型車が出たばかりのときはクレームが多くて、それをなおしていくうちに仕上がってきて、最良のクルマは最終生産型だといわれますね。あれと同じ作用が働くのです。シリーズがはじまって10話目ごろになると大ていの作監は1話のキャラクターをなおしたいな……と思っているハズです。キャラクターというのは生きものなんですね。ルパンについていうと、いまのボクに旧ルパンと同じに描け、というのは、そういうわけでとてもムリな注文と思ってください。あれはあれでいいところもある、と思いますが、いま見ると恥ずかしいほうが先に立ちます。――どうして、あんな顔描いちゃったんだろうなァ…………ってね。
「コナン+ ルパン÷2」 旧ルパンをやったのは、もう8年も前ですから、時代も変わっていますし、なによりも、ボク自身をふくめてスタッフも変わっています。去年、同じ宮崎演出でコナンをやったでしょう。こんどの映画の原画スタッフにしても、コナンをやった人が多いのです。ですから、ニュアンスとしては、コナン+ルパン:2—という感じ。次元、不二子、銭形は、まああまり変わらずというところでしょうか。もうひとことつけ加えますと、キャラクターというのは映画の内容と緊密に結びついて考えられるべきもので、旧ルパンでも、前半と後半では演出が変わってストーリーの立て方やルパンたちの解釈もちがっています。したがって、キャラクターの表情の扱いも前半と後半ではかなり異なるわけで、こんどのルパンはどちらかといえば後半に近いと思います。理由はカンタン。旧ルパン後半の演出は、高畑さんと宮崎さんがやっているからです。
Fan Comments
「最初は原作に近く、 だんだん大塚ルパンになってきている。 旧作12~13話まではマジメなルパンで、 後半、 ギャグタッチになった。きっとギャグを生かすため、 丸い顔になってきたのだと思う。 映画用はさらにふっくらとしており、 コナン的」 (ファンA)
「旧作前半は、色気たっぷり、おとな向けのキャラだった。16話から急にかわり、髪の毛が短くなり、少し子どもっぽさが出たと思う。映画用は、顔じたいにはさほど変わりはなく、むしろ性格設定が旧作初期のものに近いような気がする」(ファンB)
「旧作第5話で、武道に生き、武道に死ぬというような武人として”ルパンを殺す”といって初登場。いま見ても、おっそろしい顔をしている。もっとも、この顔がよかったというファンもいるから、人それぞれですけど……。旧作7話でルパンと気持ちが通い、男と男の友情が芽ばえている。こういう設定があったので、だんだん丸っこくなってきているのかな。目つきなど、とってもやさしくなっていると思います」(ファンC)
「う~ん。次元だけは変わりませんね。やはり目つきは少しやさしくなっていますけど。旧作のはじめのころにくらべると、笑顔が多くなったぶんだけ表情はやわらかくなっていますけどね。ヒゲなどそのままだけど、やはり少しりんかくが丸くなりましたかね」(ファンD)
「銭形は変わっていますね。旧ルバン第2話銭形の場合、たんに丸くなっただけではありませんね。りんかくはたしかに丸くなっているけど、映画用は表情自体はしまっている。よれよれのぼうしに、だらしのないレインコートといった旧作から、映画用はボルサリーノ(イタリア)のぼうしに、ボタンをきちんとはめ、ベルトをしめているといったマジメな警部風設定になっていますね」(ファンA)
