1978
September
Animage [pg. 36-38]

Comment(s):
- Osamu Tezuka
- Kon Ichikawa
- Shinichi Suzuki
- Satoshi Yamamoto
1979
December
Animage [pg. 103-105]

いま手塚プロは・・・
一度でも、東京・高田馬場にいったことのある人ならわかるだろう。国電、西武線、地下鉄などが交錯し、乗降客でゴッタがえし、さらに駅周辺には早稲田大学の学生やらサラリーマンで、夜昼とわずゴチャゴチャ・・・・・・異様な活気を見せているところだ。その高田馬場駅からおよそ200メートル、商店街のドまん中のとあるビルの2階に、駅前をさらにしのぐような熱気あふれているところあの手塚プロがある。いわずと知れた、まんが界の大御所・手塚治虫氏のプロダクションである。そのビルの2階の全フロアー、部屋数にして7つほどのスペース。むろん、手塚氏が原稿を描いたり、アシスタントの人がいる部屋があったり、事務所もあったりするが、今回の訪問先は「火の鳥2772」の製作室である。2部屋に分かれており「現在、総員40人くらい。作画関係25人、美術関係4人、演出関係4人、それに制作5~6人」(制作・山川紀生氏)という配分なのだそうだ。いまは、設定段階がほぼ終わり、作画にかかっているところ。このバカに忙しいところを、杉山卓監督にムリにお願いして案内してもらう。
50秒のシーンに600枚
原画のコーナー一番奥にすわっているのが三輪孝輝氏。「まだはじめたばかり。先生の絵コンテの指示にそって原画を・・・・・」目の前にカガミがおいてある。何するためです?(ご自身の顔でもながめるためかと思いきや・・・)「手の動きなどを角度を変えて見るため」とのこと。「三輪氏は男くさい芝居がうまい」(杉山氏)だから、ボルカン、ブーンなどを担当しているという。おとなり『パンダの大冒険』の高橋信也氏は不在。まんが家の小室コータロー氏。「手塚氏のアシスタントだったけど、いまはもう有名なまんが家」と杉山氏。いや·····と照れて「どちらかというと素浪人ですよ…(笑)」というわけでおとなりへ。(読者には、かけ足で申しわけありませんが、いずれ、ひとりひとり、ちゃんとアニメージュに登場してもらいますので、悪しからず)さきほどから、数十枚の原画をパラパラパラパラやっている人がいる。おっ、こりやちょうどいい。何かありそうだ……。この人、原画の小林準治さん。―何でしょう、それは?「これはゴドーがクルマに乗って未来都市の中を走っていくところ」「彼は本当はエフェクト的要素の強い部分の担当」と杉山さんは説明してくれたけど、エフェクトがよくわからない。ようするに、波とか風とかの自然現象」に代表されるものだそうです。ところで、いま小林氏が見てい原画はぜんぶで70枚。映画がはじまって10分~15分くらいにでてくるシーン。この50秒のクルマの走りのシーンに原画70枚、動画600枚を使う「そうで、なにやこの映画のスゴサの一端をかいま見た思い。もう一度パラパラっとやってもらうと、クルマだけではなく、背景にザッと描いてある未来都市も、走るにつれ角度や位置が動いていく。「これはあとで訪ねる美術の人との綿密な打ち合わせが必要」(杉山氏)とのこと。そりゃそうだ。(それにしても大変そう!!!元藤郁子さんは人間オルガの部分を担当。つまり、オルガは変身ロボットだから。かわいらしい女の子の部分とメカの部分があるわけ。ガンバってください、と声をかけるとなぜか女の人にはやさしいのだ・・・・・・)よゆうある感じで「そう、ニコニコしていられるのもいまのうち。まもなく戦争状態ね(笑)」白川忠志氏はオルガ、ピンチ日の原画担当。「いまはキャラの試行錯誤の段「階」だそうで「自分でいいと思っても演出からダメが出杉山氏の顔をチラリ。たりして・・・」
「個性のぶつかりあい」
もうひとつの部屋には彩色班があり、もし、いまファンが見たらいちばん楽しいだろ、とうなあいうところ。なにしろここでは、設定の終わったキャラの色見本をカベにベタベタとはってあるんだから。この彩色のチーフは高橋富子さん。「ええ、いまは美術の人と打ち合わせて、色見本を作っているとこ「ろ」オルガの色などコッていますね。「色もそうですけど、キラキラ輝くところが全身にたくさんあるでしょう。原動画の人、大変でしょうね(笑)」と朗らかな笑い。ガンバってください。この映画にかかわっている人は東映動画出身、虫プロ出身の人が半々くらいだが、いまは、ひたす火の鳥”に全力投球。「個性のぶつかり合いを画面に生かす」(杉山氏)ということだが、まとまれば、本当にすごい映画ができそう、という予感。
シーンごとに色見本
「それじゃあ、美術の部屋へいきましょう」と杉山氏に案内されていったのは、手塚プロを出ておよそ150メートルくらい行ったビルの3階。「「アニメージュ』の人」とヒゲの松本強さんに紹介される。と、松本さん「そうですか、あのアニメージュの…」と、ちょっと調子がよすぎる感じがしないでもないが・・・・・・)「ずっとごらんいただいてたんですか?」「いや、このあいだ見たばかりだけど」みんなで場所柄もわきまえず大笑い。これですっかり空気がほぐれ、あらためてこの美術室を見ると、またまた、ファンがよろこびそうなものがイッパイ!!!まず目をひくのは、絵の具の色見本のようなもの。ボードにはうすい青から濃い青まで10段階くらい色がぬられた紙が貼ってある。―これ何です?「このシーンはこういう色、あのシーンならこういう色のイメージといったぐあいに、シーンごとにまず、色のイメージを決める」ためのボードなんだそうで、さらに、そのボードをもとに、たとえば、「ゴドーの育児室このシーンなら、そのシーンのはじめはこんな色、ここで影が入ってこんな色、さらに終わりはこんな色と決めた、背景見本をつくる。なんか気が遠くなりそう。その背景見本(ノート大)が数百枚、黒くぬられたベニヤ板にベタベタと貼られており(いずれ、火の鳥大特集のときに、この見本が本お目にかけます)番用の背景になっていくわけが口でいえばカンタンでも、ムチャクチャ手間がかかりそう。松本さんは、ちょうどさっき原画の小林さんが描いていた“クルマの走りのシーン”の背景を描いており、やはり、ビルの群れが少しずつ角度を変えていく。「これ動かしちゃうんだと杉山氏にいわから、すごい!!!」れなくても、そのすごさはわかる。-時代の設定はいつぐらい?「21~22世紀くらいのイメージでやってもらっています」(杉山氏)「この映画、キャラの色がわりが多いんです。たとえば人物が物カゲに入れば、当然、色が変わるでしょう。そういうところまできめこまかく描いていきたい」松本さんは恐ろしいことを平気な顔をしていう。
一度イメージをとらえれば・・・
美術の部屋から、ふたたび手塚プロへもどると、演出の中村和子さんと演出助手の安濃高志さんがいた。もうひとりの演出・石黒昇氏は不在。(やたらと演出がいると思われるかもしれないが、それぞれ担当がある。中村さんはキャラのお芝居中心、石黒さんはエフェクト部分の演出担当)中村さんはなにやらマスクをかけており、杉山氏が「あの中村和子さん・・・・・・」と紹介すると「なにが、あのなの・・・(笑)・・・ゴホンゴホン・・・」とカゼで苦しそうなので、お話はまたこんど。上がってきた原画をチェックしている安濃さん。「さすがにOKのほうが多いですね。初期のころは、まだイメージがつかまえきれなかったらしく、リテイクもたまにありましたが・・・」一度イメージをつかまえれば、これだけ力のある人をそろえているんだから、OKが多いのも当然といえる。一巡りしてみて、ちょっと驚いたのは、その内容もさることながら、これだけの超大作を、どの担当者も、しごくあたりまえの顔をしてこなしていることだ。自信がよゆうを生んでいる、という感じ。とにかくこれだけはいえる。すごい映画ができる!!
来年3月8日東宝系大公開!!
Comment from Taku Sugiyama
異例のかたちで始まった
この「火の鳥2772」の原作は、手塚治虫が新たに描き下したまったくのオリジナル・ストーリーである。しかし、最初にこのオリジナル・ストーリーがわれわれスタッフに示されたのは、文章でもコママンガのかたちでもなかった。そのはじめは、6~70枚のストーリーボードを展示し、手塚治虫自身がそれを説明するという異例のかたちであった。その後、このストーリーボードと、手塚治虫の書いたシノプシスにもとづいて、私(杉山卓)が脚本の第一稿を執筆。だが、この第一稿は、将来変わる”という点ではなはだ不完全なもので、話全体を見通すための指針という程度の役割りでしかなかったものであった。
ストーリーボード優先主義
なぜこんなことになっているかというと、この映画の場合、徹底したストーリーボード優先主義をとっており、ストーリーの展開、ドラマの追求まで文章によらず、画面によってなされるのである。いわば、これが原作者にして総監督の手塚治虫にしてみれば、もっとも自己の資質に合った方法ということなのだろう。もっとも、ストーリーボードが脚本に優先した例としては、劇場アニメの場合「わんわん忠臣蔵(東映動画)「千夜一夜物語」(虫プロなどないではない。が、準備稿ないしは第一稿ぐらいは、シナリオが先行するのがふつうである。(シナリオとの優先順位をべつにすれば、東映動画の劇場用作品ではおおむね?トーリーボードをつくっている)
スタッフにも予測しがたい
さて、最初に示された原作してのストーリーボードを第一段階とすれば、具体的な作品づくりとしての第2段階のストーリーボードが、先ほどの不完全なシナリオ第一稿を手元に、あらためて手塚治虫によってつくられることになる。あるときは第一稿にそって、ときにはまったく本人の意想のおもむくままに、シナリオをはなれて自由に展開しつつ、スタッフにも予測しがたい形でストーリーボードがつくられている。ゴドーとレナのラブシーンでは指先の演技にいたるまで。ゴドーとブラック・ジャックの格闘シーンなどでは、ワンショットのコマ数が8コマとか1コマで、こまかく指示されていたりしているのをはじめ、総監督の意図が盛り込まれたストーリーボードが、ぜんぶで2000枚ちかく描かれている。監督としての第1番目の仕事はこのストーリーボードを再編成し絵コンテにまとめあげることである。あるシーンはストーリーボードそのままに、あるシーンは書き加えて変更を入れながら、トータルで総監督・手塚治虫の意図を最大限に表現できるようにつとめるのだ。
すごいメンバー!!!
その間、並行してキャラクター・デザイン、メカニック・デザイン、美術設定などの設定作業が進められている。キャラクターの基本デザインには大島やすいち(まんが家)寺沢武一(まんが家)中村和子(アニメーター)高橋信也(アニメータ-)三輪孝輝(アニメーター)正延宏三(アニメーター)湖川友謙(アニメーター)の各氏が参加し、最終的に手塚治虫の手によってすべてのキャラクター・デザインがまとめあげられた。メカニックデザインは御厨さと美(まんが家)が担当し、美術デザインの基本設定にはもとのりゆき(イラストレーター)篠原博士(イラストレーター)松本強(デザイナー)の各氏が担当し、松本強は本製作における美術も、伊藤信治とともに担当している。以上が設定班として、本製作にかかる前の基本設定を監督の統括のもとにつくりあげていくというわけだ。このほか『火の鳥2772』では作画監督のいない”キャラクタ一制”をしき、その体制的不備をおぎなうため、演出グループ(中村和子、石黒昇)をおいたりしている。”キャラクター制”ときいて、アニメ関係者は、いまなぜ?と思うだろうし、最近のファンの人は作監がいないということで奇異な感じをうけることだろう。これなどの説明もしなくてはならないが、誌面がつきた。来月もこれらの説明と、この作品にかかわっていく人間とその役割などをご紹介していたいと思う。(文中敬称略)
1980
March
Animage [pg. 50-51]


公開前にちょっとみどころを..
キュート・オルガ
感情をもたない育児ロボット オルガがゴドーと寝食をともに する。成人したゴドーに対する オルガの愛情の芽ばえなど、こ の作品を支える心理描写のみご とさをまず第一にあげたい。 それは、ゴドーを救いながら ロボットのもつ超能力を発揮す るスーパーヒロインに、現代女 性のすがすがしい魅力を見る反 面、ゴドーによりそうときの幸 福そうな表情やしぐさは、人間 の女性そのもので、多くの男性 ファンは魅了されるだろう。
愛と友情そして人・・・
ポイントの3番目としては、ゴ ドーをとりまく人間たちの友情、 愛、そして葛藤などの描写がある。 試験管ベビーではあるが、ゴド ーと兄弟であるというロックをは じめ、ゴドーの地球脱出を陰で助 けるブラック・ジャック、サルタ たちの人間関係が楽しめる。 特に、労働キャンプ内での話は、 作中に流れるテーマと、手塚氏の 主張を多くふくんだシーンとなっ ている。 ブラック・ジャックのゴドーに 対する憎いばかりの心づかいは、 見るものにスカッとした印象を植 えつけるだろう。
「火の鳥の変化」
原作を熟知しているファンには、 すでに伝えられているように、火 の鳥の変化にア然とした人が多く みうけられた。 だが、映画の作中で手塚治虫氏 の意図しているテーマを描ききる ためには、火の鳥の存在をモンス ター化せざるを得なかったとのこ 作品後半では、ゴドーをとり まき、あの慈愛に満ちた火の鳥の 姿を私たちの前にみせてくれるこ とと思う(後半については、秘密と のことで、おしえてはもらえなかっ た)。 みどころのその2は、この火の 鳥と、人間たちの心理的葛藤もさ ることながら、ゴドーの乗るシャ ーク号を火の鳥の闘いの場面だ。 火の鳥の怒りくるう目の表情か 「らはまり、シャーク号との戦闘 シーツは、特撮をふくんでのロー トスープ使用によるアニメート の効果。加えて画面構成、演出の みごとさが、このシーン成功の上 大きくウェイトをしめている。 「火の鳥」では、戦闘シーンは多 くいため、力の入れぐあいも より一層にちがっているのだろう。 この火の鳥の出現方法によって、 見る側としては、後半の火の鳥の 変化、および作中にはたす役割に つい気をもたざるを得なくなっ たというのが、いつわざる心境で ある。このシーンをふくめて、B パートでの、手塚氏の演出は最大 の関心事である。
音のイメージも
アニメの要素のひとつに最近は 音楽があげられているが、クラシ ック調のすばらしさも火の鳥” の特徴だ。これは、いままでのア ニメ作品にはみかけられなかった ひとつで、火の鳥ではたして成功 するか否か、注目されている。 目で見、耳で聞く音の重要さに は音楽同様、登場人物の声もふく まれていることは、いうまでもな い。 「声の役を決めるにあた って、表現力と作品、 物の解釈度にポイントを しぼって、声優の方にオ ーディションを受けてい ただきました。 このオーディションでは、ゴド 一役に新人を起用しようと、手塚 先生がいわれてその可能性大です ので注目して下さい」 との制作者側の声からもわかる ように、声なり音が重要視されて いるのがわかるだろう。 声のキャスティングについては、 いま上映されている予告編の人 たちとは一新するとのこと。 期待したい!!
April
The Anime [pg. 9-17]



Voice Actor Comments:
Kaneto Shiozawa
ぼくも今までアニメーションには 何度か出演しましたが、今回の「火 の鳥2772」には驚きました。 な にしろ”モノ凄い〟というのがピッ タリなくらいの大作で、その重厚さ は文学作品に負けないものを感じま す。このすばらしい大作、そして初 の大役。 もう、作品に負けないよう、 ただただ頑張ったつもりです。
Katsue Miwa
私の役、オルガは育児ロボットで す。まだ小さいゴドーを、青年にな るまで育ててきたわけです。またこ のストーリーのキーポイントのひと つでもある大役です。 ですから色々 と工夫しましたが、特に飛行機や車 に変身するので、その都度キャラク ターを使いわけてみました。 本当に すごく楽しいお仕事でしたね。
Keiko Takeshita
私はアニメ出演は初めての経験で す。 声だけで勝負するのは、舞台や TVと違ってひと苦労でした。その 上〝火の鳥”というキャラクターは、 神秘的で幻想的な存在ですから、ミ ステリアスな雰囲気を出すために本 当に苦心しました。 この「火の鳥2 772」 は誰でも楽しめるステキな 作品です。その中でこんな大役をお おせつかるなんて夢のようですね。
Shuichi Ikeda
僕は劇場用アニメ出演は初めてな ので、少しばかり緊張しました。 ロ ック役は冷酷さと人間らしさの両面 を要求される役でしたので、そうい うものが出せたか否か、心配です。
Kazuo Kumakura
とにかくこの作品のスケールの雄 大さには圧倒されっぱなしでした。 また僕の演じたサルタは、年寄りの くせにバイタリティ抜群! 素晴し い人物です。聞くところによるとサ ルタは手塚さん自身とか、本当に光 栄なことです。
Masatō Ibu
BJは雑誌の頃からのファンです。 それに「バンダーブック」についで 二度目。 あの冷徹な中に見せた人間 味が出せたら幸いです。
Toshiko Fujita
「火の鳥」のシリーズは、かかさず 読むほどのファンですので、仕事の お話がきた時には、思わず叫んでし まったほど。レナのイヤミにならな い上品さ、出せたでしょうか?
Chikao Ohtsuka
今、どうしても粗製乱造にな りがちなアニメ界の中で、この作品 は本物だという感じがヒシヒシと伝 わってきます。また世捨人バンこと ヒゲオヤジ―――この役、私はとても 気にいっているのですよ。
