1980
September
Animage [pg. 32-35]



こんにちは! 墨谷二中の谷口タカオです。4月の『キャプテン』放映後はみなさんからたくさんの励ましのお便りをいただき、ナイン一同、感激しています。なにしろ、ボクらはあまりカッコよくないし(イガラシなんてサルみたいでしょ) プレイもとくに華麗というわけじゃないし…。それなのに、こんなに声援を受けるなんて、穴があったら入りたい感じです。それ以上にウレシイのは、前回の反響がよかったおかげで、再びみなさんとブラウン管で会えること。しかも、延長分では、宿敵・青葉と再戦ができるんです。ボクら、ヘタッピイばかりですが、チームワークとネバー・ギブアップで絶対に雪辱するつもり。期待していてくださいね!
ファンの強い要望〟が「キャプテン」を再登場させた
積み上げられたファンレターの山を見て、日本テレビ・堀越徹プロデューサーはおどろいた。手紙はぜんぶ、さる4月2日に同局で放映されたスーパー・アニメスペシャル 「キャプテン」に対する反響である。内容は、いずれも「感動した」「すばらしかった」「泣けてしかたなかった」といった、手放しで評価しているものばかり。そればかりではない。「谷口クンたちを見努力の大切さを知った。やればできると思った」(秋田・佐々木郁さん=中3)「感動に思わず泣いてしまった。愛・友情・信頼・努力というものをあらためて考えた」(茨城・柳生由美さん=高1)など、ねらいがストレートに伝わったことを感じさせるものばかりだった。このような手紙は、局ばかりでなく、新聞や雑誌にも数多く届いているという。「ある程度の自信はあったんですが、これほどとは…。原作(ちばあきお)のよさとエイケンの表現力の確かさの結晶」と堀越プロデューサー。裏番組の『ミッキーマウス大会』(TBS)にまさるとも劣らない視聴率(17.5%=関東地区。ニールセン調べ)をあげたことも予想以上だった。そんな背景から再放送ムードが高まり、話はトントン拍子に具体化した。ただ、これだけの反響を前にして、単なる再放送ではツマラナイ。そこで、まず新作分をつくり、時間を30分延長。「ファンの強い要望もあって、宿敵・青葉との再試合という設定にしました」(堀越氏)。勝敗は見てのおたのしみとして、とにかく、第1戦以上の白熱したドラマチックな戦いが期待できそう。つぎに、30分延長したことで、放映時間はしめて2時間。これを同局のドル箱、あの「映画って本当にいいもんですね」の水野晴郎でおなじみ『水曜ロードショー』にぶつけることにした。「夜9時からと、やや遅いけど夏休みでもあるし、大人のファンもかなり多いからだいじょうぶ」と、日本テレビでは満を持しての再放送となった。
期待に応える鷺巣ーサー「延長編は見応えタップリです」
「こんなにみなさんに喜んでもらえたなんて……まったくスタッフ冥利につきます」と喜色満面で語るのは、エイケンの鷺巣政安プロデューサー。その手には、ファンから寄せられた手紙のコピーの束が握られていた。「うれしいですねえ。便りをいただくことももちろんですが、その内容がまた感激。単に、よかった、おもしろかった、泣けたというだけじゃないんですよ。たとえば、キャプテンを見てクラブ活動をやり始めたとか、レギュラーになれないけどもう一度がんばるとかね。それに、キャラの描き方や動きなどにも的確な批評が来ています。『原作を生かすためにも単なるお涙ちょうだいモノにしたくない』という演出(出崎哲=マジックバス)のねらいがズバリ当たった感じなんです。新作分をふくめた再放送にも気合いが入ります」しかし、アレコレ考えてみると、どうにも不思議。何がって、もちろん『キャプテン』の爆発的人気だ。カッコいいヒーローがいるわけでもない。ジャガイモのような顔の谷口クン、サルづらのイガラシ、ちんまり鼻の丸井…。身体はお世辞にもスマートとはいえない。それに、野球ものといっても「ちかいの魔球』や『巨人の星』のように、SFもどきの魔球が出るわけでもない。要するに、ハッキリいって、ドロ臭い。そのへんを鷺巣氏はこう受けとめている。「少年野球だけでなく、いまの学校は完全な管理社会。だから、キャプテンのように、子どもたちだけでいろいろ失敗をしながらも力を合わせて目的に向かって進むひたむきな姿が共感を呼んだのでは……。彼らにとって、キャプテンのような野球こそ、やりたくてもできない、それこそ”SF”でしょうから」現実生活に対するアンチーそれがキャプテンの人気の秘密かもしれない。鷺巣氏は多くの期待にこたえるためにも、延長部分は練りに練って仕上げると大はりきり。「ストーリーはもちろん、演出的にも、出崎さんがいろいろな試みを駆使しているし、ひとコマひとコマが見どころのつもり。いまたけなわの甲子園野球以上に、スカッと清涼感あふれる作品をつくり、新学期の大きな話題にしてもらいますよ」と、いまからその成功を信じて疑っていない。視聴者の熱とスタッフの熱が合ったこの作品、期待しよう。
さて、興味は再試合(延長分)の行方だが…
30分の延長分は、ほとんどが墨谷対青葉の再戦シーンで埋められる。第1戦に健闘空しく惜敗した墨中の雪辱、はたしてなるか? 試合の命運を分かつヒーローはだれなのか? 興味はまったくつきない。そこでまず、ストーリー紹介の前に、演出の出崎氏から製作上の注目点を話してもらおう。「再試合も、メンタルな部分を随所にとり入れた手に汗握る死闘にしました。甲子園よりおもしろいはずです。キャラ的には、第1戦でイガラシがいい役どころをやったので、今回は谷口と丸井にスポットを当てて描いています。また、青葉の監督がはじめてサングラスをはずしますが、その理由は見てのおたのしみ。そのほか、佐野がはじめ監督命令に逆らうシーンなど、演出もかなりこったつもりです。第1戦を上まわる出来と自信をもっています」さて、延長分のストーリーだが、おぼえていると思うけど、第1戦で墨谷の意外な実力にあわてた青葉は、1試合に15人もの選手を使った。条文化されてはいないものの、アマチュア精神のうえ非常識とみて、連盟委員長は再試合の裁定を下す。朗報にわきたつ墨谷だが、悩みがひとつあった。松下投手の肩が故障したままなのだ。やむを得ず、急造投手・谷口の先発で試合にのぞむ。しかし、不運にも谷口の指が3回に骨折。かわったイガラシも8回に疲れでダウン。骨折を押して再び谷口が。まさに死闘となった試合は墨谷リードで9回青葉サヨナラのチャンス。佐野、執念の一打はセンター前へ。白球を追って墨中ナインは激突。さてボールは? 前作を見た人も、みなかった人も、きっと興味をよぶことだろう。
「キャプテン」のここが好き!殺到したファンの声を紹介しよう
前回の放映後、日本テレビに、エイケンに、新聞・雑誌にとファンからの手紙が殺到した。いったい『キャプテン』のどこがよかったのか? 代表的な声を紹介すると「キャプテンのみんながうらやましい。あんなにいい仲間がいて、あんなに青春を賭けられるものがあって」(札幌・大滝千鶴) 「マンガでは泣かなかったが、アニメでは泣いた」(静岡・後藤理恵) 「感動すると同時に努力の意味を教えられた」(和光市・湊谷浩子) 「ふれ合う人と人の結び目がどんなに大切かがよくわかった」(下関市・貞方実千代) 『キャプテン』の人気の秘密がいっそう浮き彫りにされてくる。
1981
July
My Anime [pg. 65-71]

Animedia [pg. 20-22]

ACT 1: どちらも本質は下町的なんだ (Interview with Tetsuya Chiba and Akio Chiba)
AN. まず、スポーツドラマという同じジ ャンルで、しかもご兄弟の作品というジ ヨー”と”キャプテン”ですが、作風は まったく対照的ですね。
Tetsuya. そうだね。”ジョー”はハードだ し、“キャプテン〟はあたたかさがあるか らね。 あきおの作品には、自分のおいた ちや生活感を生かした“味”が出ている んだ。
Akio. あ たたかさと いうか、下 町的なんですよ。 アニキもぼくも、 東京の向島育ちで すからね。
Tetsuya. ジョー” の場合は、原作つきなので、どうしても 梶原一騎)さんの色が出ているんだ。
Akio. アニキの作品も、基本的には下 町的だと思いますよ。ジョー”のドヤ街 なんかもそうだけど。
Tetsuya. そうだね。作業服を着た男とか、 ヨッパライ、子どもたちなんかは、たの しみながら描いてたよ。
AN. ジョーは天性の才能を持つ男で、谷 ロくんは努力タイプですが、おふたりの 性格がキャラクターに反映されているん でしょうか?
Tetsuya. ぼくが天才というわけじゃ ないけど(笑)、あきおの場合は出てます ね。あきおもかなりの努力屋だからね。
コツコツ形作るーちばあきお とことんやりぬーくちばてつや
AN. では、 てつや先生の性格と いうのは?
Tetsuya. 自分で言うのもなんだ けど、ぼくも谷口くんのような ところがあるんじゃないかな。
Akio. すごくねばるんですよ、アニキ は。仕事に対する姿勢は、見ならわなき ゃならないと思います。
Tetsuya. てれるなァ、おい(笑)。でも、あ きおも相通ずるところがあるよ。コツコ やりながら少しずつ形作っていくんだ よね。それに、なんでも器用にこなし ちゃう。ウチの兄弟の中でも、いちば ん頭がいいんだ。
Akio. そんなことないよ(笑)。 そ れよりも、仕事に対しては、ア ニキはジョーみたいなところが ありますね。とことんやりぬ くというところなんかは。
Tetsuya. う~ん。 完全燃 焼を信条としているの は、確かだけど……。
対照的なスポーツ作品に見る共通点
闘いを求めてさすらう狼、矢 吹丈と、野球というスポーツを 楽しむ谷ロタカオ。一見対照的 なふたりだが、そこにはやは り、共通するものが流れている。 スポーツは、結局闘いである以 上、苦しさ、くやしさはついて まわる。ジョーが激しいトレー ニングと、苦しい減量に立ちむ かうように、谷口もまたキャプ テンの重責を背負って立ちあが る。そこにあるものは、敵への 闘志というよりは、自分との闘 いでしかない。そして、これこ そ、闘いが生きる証しであるジ ョーと、野球を楽しむ谷口の共 通点であるのだ。 ジョーは自らの闘いにまっ白 に燃えつき、谷口は宿敵青葉と のゲームに勝利する。結末は違 っていても、ふたりの顔に浮か んだ微笑みは同一の ものなのだ。
ACT 3: ジョーとキャプテン”は いっしょに見てほしいなァ ー
AN. さて、二作品ともほとんど同時に 公開されますが、おふたりの意気ごみ をうかがいたいのですが。
Tetsuya. 意気ごみというのはないです ね。とにかく、ラストシーンの”まっ 白に燃えつきたジョー”を、アニメで 表現したいんです。以前のテレビのと きは、連載にアニメが追いつい ちゃったので、やむなく途中で 終わらせたので、ずっとジョ ー”のフィニッシュをアニメで 描きたかったんですよ。
AN. あきお先生は、劇場映画は はじめてですね。
Akio. やっぱり、うれしいで すね。とくに、地方では2作品 同時上映でしょう。ぜひ、いっしょ に見てほしいですね。
Tetsuya. そうそう。 なんで都市部で は分けて上映するんだろう。ぼくは 兄弟というのは別にしても、”キャプ テン”が大好きなんだ。組み合わせ としてもいいと思うよ。ぼくも地方 で見ようかなァ(笑)。
AN. ところで、〝キャプテン”には、ほと んど女の子が出てきませんね。
Akio. 女の子を描くだけのスペースが ないんですよ。男の子のぶつかりあいだ けで、精一杯なんですよね。
Tetsuya. そういえば、最近の少年マンガ は、女の子がよく出てくるね。なんか、女 の子にふり回されてるような気がする。 出てくる男がみんなナヨナヨしてて・・・・・。 ぼくは、どうもこういう傾向はニガテだな。
Akio. そうですねえ………。もっとも、ぼ くは女の子を描くのがニガテだけど(笑)。
Tetsuya. ジョー〟はあれだけ男っぽい話 だけど、女性の読者も多いんだ。女の子 がマンガに登場しなくても、キャラクタ ーの生き方をとらえてくれるんだ。これ は、とてもありがたいことですね。
AN. ジョーと谷口くんの生きざま、とい うことですね。ところで、ジョーも谷口 くんもがんばり屋”という点は同じで すね。
Akio. 人知れず努力するというとこは、似てますね。
AN. やはり、おたがいに影響しあっているんですか?
Tetsuya. そうかもしれない。そういえば、 ぼくの作品で、あきお がモデルになってるキ ャラクターも多いよ。
Akio. 〝国松(ハリス の施風)”のアー坊なん かそうでしょう。
AN. あきお先生の作品 で、てつや先生がモデ ルになっているのは?
Tetsuya. ぼくは出てな いよ(笑)。
Akio. う~ん。谷口 くんのがんばりなんか は、アニキの影響かな (笑)。
