1980
August
Animage [pg. 19-34]



September
Animage [pg. 19-34]



いま公開直後、たちまち大人気のヤマトの、内容とともに話題になっているのが”ワープディメンション〟。画面、サウンド、映像の3点が一気に変わるという、この画期的新方式の秘密をさぐってみると…
4チャンネルとは…
スクリーンのうしろにある3つのスピーカーと後方の壁面にうめこまれている《ウォール》と呼ばれるいくつかのスピーカーによって立体音響が構成されます。モノラルのときは②のスピーカーだけを使用することになっています。
アフレコ 7月13・14・15日
この3日間、朝10時~夜12時まで、スタッフも声優さんもビッタリとスタジオづめ。激闘3日目、やっとメドがついたところで記者会見。西崎「ヤマトはアメリカのSF誌でも評価、今世紀最大のSFニメだといっている。その大作をささえているのが、舛田監督の歯ぎれのいい編集、絵の美しさ、声の人たちの芝居。ひとつかけてもヤマトはできない」舛田「ぼくが切るたびに泣くんですよ(笑)」西崎「入れ込みすぎかな(笑)」入れ込みすぎといえば、すごいのがサーシャ役の潘恵子。”録音のとき、本人が役になりきって、泣いてしまい、できなくなった”(田代音響監督)こともあったほど。また今回、聖総統役の大平透「やっとヤマトに出させてもらいました(笑)。もともとかたき役をやりたかったし、かたき役というのは本当にたのしいんです」西崎「かもしだされる大きさが自然じゃないといけない。大平さんはみごとだった」大平「新人なもので緊張しています(笑)」また、ほかの声の人たちについての田代氏チェックは……。アルフォンの野沢(那智)さんは昔からの仕事仲間。ニヒルうと思っていた。サーシャの潘恵子さんは本当によかった。かわいらしくて、律義な役をみごとにこなしていた。田中崇(グロータス)さんは、日本人としてめずらしい太い声帯の持ち主。これまたよかった。前作でズオーダー大帝をやってもらった小林修さんは、たいへん評判よかったので、今回は地球側のまとめ役(山南艦長)をやってもらった、とのこと。かくして、ヤマト号は発進した。
Comments:
Atsumi Tashiro: アニメーションで4チャンネルステレオというのは、それほどめずらしいことではありませんが、途中から変わるというのははじめてですね。いままでのヤマトの音楽はシンフォニック的なところがあったので、光の出現とともに4チャンネルに突入したあとは、音楽の質を変えました。たとえば「さらば・・・』のとき白色彗星のイメージはパイプオルガンでしたが、今度の2重銀河はシンセサイザーのイメージで構成しました。異様であり、なお感動的なサウンドで場内をつつみこむつもりです。ボク自身としては、なるべく大都市の劇場で見て4チャンネルを聞いてほしいですね。
Yoshinobu Nishizaki: そもそもヤマトは、大作映画として70ミリでやりたかったんですね。ボクとしては、親子連れで、しかも大きな劇場で余裕をもって見ていただきたいと考え、なんとか70ミリで時間をかけて作ろうと思っていたのですが・・・・・・諸般の事情により、どうしてもこの夏に公開せねばならないということから、たいへん残念でしたけど、今回、あきらめざるをえなかったわけなんです。このねらいというものは、70″にしても、シネスコにしても、画面の横の広がりがビスタにくらべてかなり広い。画面そのものに奥ゆきが出て、ヤマトの迫力がさらに出てくるんですね。また、黒色銀河を越えた人類未踏の地の風景というものを”スキャニメート”を使って3段マルチ以上の立体的な奥ゆきを表現するわけなんですが、これはビスタじゃあ追いきれないわけです。なんとか大きな画面にする方法はないかと、考えついたのが、今回の方式なんです。
Yukio Katayama: 画面がビスタビジョンから、シネラマスコープサイズ(通称・ワイド)になるのは、ヤマトが黒色銀河の出口を通過して、目の前に新銀河が出現したところからです。ビスタサイズのタテ:ヨコ標準比率が1対1・85、ワイドになると対2・35ですから、約3割画面が横に広くなるわけです。画面が大きくなって特に苦労したというような点はありませんが、セルの大きさ、レンズなどのことを考えると、スタンダードサイズのほうが、セルが小さいぶんらくだといえます。とにかく、いつものことですが、いちばん苦労するところは透過光ですね。透過光はセル撮影時に合成していくので、最後の1枚にNGが出ると、そのカット全部を撮り直しということになりますからね。今回、時間をかけた透過光は、人工都市がゆらゆらとカゲロウのように光る部分とか、重核子爆弾の噴射エネルギー。これはカメラワークと重なったものだったので、光がズレないようにするのがたいへんでした。あとは、ニセ地球が爆発したあとに出てくるホネ地球(デザリアム星)ですね。これは見ていただければわかると思いますけど、こまかい光点が、めいっぱいついているのでかなり苦労しました。
Tomoharu Katsumata: “スキャニメート”というのは、ひとことでいってしまえば、電子で絵を作るということなんです。もともとこれはNASA(米連邦宇宙局)の職員が作ったんじゃないかと思うけど、色彩を自由に変えられるという利点があるんです。あの火星探査船からの映像、あとで火星の空の色が違っていることがわかってなおしたでしょう。ああいうことができるわけなんです。これは、利点とも欠点ともとれるところですが、スキャニメートの絵というのは厚みや重さがないので奥ゆきを出すにはいいのですが、密着度というものは出せないんです。たとえていえば、雲が流れて地上に雲の影が走るでしょう。ああいった感じで、あくまでも光の影ですね。今回、絵だけでは弱いということで、暗黒星雲を抜けるところと、えもいわれぬ空、それに2重銀河の光の雲が黒色銀河と重なりあって動いているシーンなどに、このスキャニメートを使用しました。ひとつ心配なのは、もともとビデオ用なので16ミリのフィルムを拡大して35に合成するわけなのですが、きたなくなってしまうのではないかということがあるんです。とにかく、ことばで語るよりも見ていただいたほうがいい。絵的効果と音の組み合わせですからね。
Kazuhiko Udagawa: 『ヤマトよ永遠に』の見どころのひとつとして、古代たちの織りなす愛のかたちがある。全カットに目を通した総作監・宇田川氏に古代進、森ユキ、サーシャ、アルフォンたちの見ごたえのあるシーンを語ってもらった。「今度のヤマトは芝居がおとなっぽい。つまり、リアルな芝居が多くなったんですよ。実写にどこまで迫るか、みたいなことになると思うけどね」
Kazunori Tanahashi: 「ふつうのアニメーションでは、あまり計算されないようなところまでキャラクターの表情の変化を大事にしました。いろいろな芝居のしかたがありますけれど、今回はアップ芝居が前作にくらべて多いはずです。サーシャが進にサーシャであることを打ちあけるシーンでは、進がサーシャに守の死を伝えたところで、彼女の感情表現をカミの毛で出しています。このシーンでは、風がなくてもサーシャのカミの毛がたなびくんです。こういった試みが成功していればうれしいですね。他の見どころといえば、中間基地での空中戦と波動砲で敵の母星をぶちぬくシーンでしょうね。中間基地の戦闘シーンは金田伊功さんがぜんぶチェックしてくれたので、いい意味でフンイキが違うかもしれません。母星をブチ抜くシーンは石黒昇さんが、30カットぐらい原画を描いてくれたんで、ここは絵づらでの迫力があるシーンになっていると思いますよ」
