Animage #009 (March 1979)

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pg. 9-18: Cyborg 009

Interview with Shotaro Ishinomori/Takeyuki Suzuki/Takashi Iijima

原作に忠実なキャラクターデザインで….

AM. オリジナルアニメのテレビ化では企画案とキャラクターデザインが同 時に先行し、できあがっているのが ふつうだ。だが“サイボーグ009″ のように原作のある場合には、とき としてアニメデザイン・キャラクタ – の決定がおくれることがある。 サイボーグ”では、企画書には原 画を使用し、番組決定後、スタッフ により、ストーリー・曲・作品イメ ージの綿密な打ち合わせと同時進行 デザイン化が進められた。 デザイン決定までのいきさつを石 森氏に聞いてみた。 過去にサイボーグ009”は 東映動画で、劇場作品とテレビ作品 が作られていますが、今回の宇宙 樹編”では、キャラクターは大きく 変化しましたか?

Ishinomori. 「一目瞭前だと思うが、前作と は変わっているでしょう。今回のは 話が原作のエッダ編からとって いるので、マンガの原作に忠実なキ ャラということで希望したからね」

AM. みんな、現代的なセンスをおびてスマートになりましたね。変わったので目につくのは、007が大人元の姿で登場ですね。

Ishinomori. 「昔のは劇場用ということで、小さな子が対象なわけ。そこに中年を登場させるのはどうも・・・ということから子どもに変えたんだが、今回子どもから大人までの広い層が夕ーゲットなので原作のキャラで出しました」

AM. デザインの決定をみるまでにどのくらいかかりましたか?

Ishinomori.「第一回の打ち合わせから20日間くらいかな?」

AM. その間の打ち合わせの手順は?

Ishinomori.「まず、去年の11月25日にスタッフが集まって作品のイメージ説明をやり、そして、12月11日の会議に作画監督の芦田さんから、デザインの第一稿があがってきた。キャラクターは、ほぼ原作に近いイメージで描かれていて、こちらの意図をつかんでくれており、基本的には満足のいくアニメキャラにあがっていた。若干の手直しだけですみました。つまり009→髪の毛と目を少し大きく。→目は両方内側に向いているが、どちらか片方に向ける。それとギャグキャラクターなので、背.を低くして丸味をつける。003→全体が男っぽくかたいので、胸や腰に丸味をつけて、女の子らしい曲線を出す。顔はアゴが出ないよう、丸味をつけてかわいく。――これぐらいだった。本当によいあがりだった。第一稿の手直しがあがってきたのが12月22日。その日に決定サインを出し、色指定にうつり、カラーチャートとにらめっこで、の毛はどうのとやりましたよ」

AM. 原作でも、色のイメージが幾通りかあるようですが。

Ishinomori.「マンガの場合には、場面のイ メージで色を少し変えて使用してい るが、基本的イメージの色は決まっ ている。その色がアニメの色にある のかどうかが問題だった。目を皿の ようにして、カラーチャートをみな がら色をさがしたよ」

AM. すんなりみつかったわけですか。

Ishinomori.「いや、一回目が上がってきた ときに、少し色を修正したから、すんなりとというわけではないね。ま 手直し部分をいえというんだろ。 (笑)。まず、009→髪の毛がクリ 毛のイメージから淡かったので、茶 に近い色を追加して重みをつけた。 ・002→目玉を二重にしてみた。 ・003→髪の毛の色が、黄色とク リ毛に近い色の2種類を作ってきた ので、おちついたクリ毛に決定。 .005→ドイツ人の銀髪の印象は まっ白に近く強烈なので、少し淡い 色にしてはどうか。それと目の色。 006→髪の毛を紫にと希望した が、中国人のイメージで黒に落ち着く。アップになると黒髪は重いので おでこを広くし、髪の毛の面積を少 なくする。 007は、目玉の上の シワを2~3本入れさせ、ギルモア 博士は、鼻にストライプを入れさせ た。これくらいだね」

AM. こうして決定したのが、上記のキャラクターというわけですね。

Ishinomori.「そう。会議だけでも40時間以上をついやして生まれたものだよ」

AM. 最近のアニメでは、メカニック類が多く登場し、番組を飾り立てていますが “009” ではいかがですか。

Ishinomori.「マンガのほうに出てくるぐら いは登場させます。ギルモア研究所、 ドルフィン号、ジョーの愛車などを ね。基本的にはこれのみで いく予定。 ドルフィン号も、 名前のとおりイルカに近い デザインでせまり、丸味を出すこと により、009の世界にあうものを イメージしました。いまのメカデザ インというと、メカニズムのカタさ に毒されすぎている傾向にあるが、 メカは発達していくにしたがい、丸 味のある流線型になっていくと思う。 いわば簡素化していき、表面はごて ごてしなくなるんじゃないかな……」

AM. 機能的にみると。

Ishinomori.「サイボーグたちの移動用に徹する。武器などを取りつけると、サイボーグたちの意味あいがなくなるからね」

AM.それだけですか?

Ishinomori.「そうそれだけ。ドルフィンⅡ 世号は、ほんらい海をいく乗り物だ が、戦う場所におうじてそのつど変 型させて、機能をアップさせること ができる。それが飛行タイプや地上 タイプに変わることだがね」

AM. 009の愛車も同じように、動用ですか。

Ishinomori.「基本的には同じ。まあ煙幕を出したりなどの小道具が、ときには出てくるかも知れないが、それはストーリーに入ってから、スタッフの人が考えてくれるんじゃないかな」

AM. ギルモア研究所はかなり戦闘的ですね。

Ishinomori.「デザインのせいじゃないかな。ドルフィンⅡ世号などを作れる設備や性能を考えると、このぐらいの大きさの研究所になる。武器などもあまりつけない予定」

AM. 話のようすでは、メカはあまり登場しないことになりますね。

Ishinomori.「そう。サイボーグたちと神々とのやりとりを中心に画面構成を描いているので、ファンIIー性を強調したいのでね。事件の起こった現場へ駆けつけるときのみにしたい。世界中で事件が起こるので、メカがなくてもこまるがね。作品のひきたて役にてっすればよい。」

AM. デザインという視覚の部分につ いてお聞きしてきましたが、こんど は耳で聴く 曲のイメージについ ておうかがいしましょう。主題歌を 作詩するにあたって、心の中で描か れていたものは?

Ishinomori.「作品全体のイメージというか基本姿勢というか、サイボーグたちのもつ悲哀感をイメージしました。戦う宿命を背負って生きなければならぬサイボーグたちの生きざまをね」

AM. そうしますと、オープニングからもの悲しそうなイメージになりますか。

Ishinomori.「いや、こう何かめずらしい楽 器などをとり入れて、やさしさなど を強く曲のイメージで出してくれれ ばそうはならないと思っている。 歌い手にしても、希望としては、N TVの西遊記的な曲で『ゴダイゴ」 とかを候補にあげたんだが。まあ、 水木一郎やささきいさお氏らのよう なハマリ役ではなく、別世界から新 しい人を起用するハラづもりでいるので期待してほしい。いままでのア ニメの定説を打ち破る何かを盛り込 みたい。画面でも音楽でも、つねに 新しい試みにいどみたいわけ。 曲に ついては、イメージをプロデューサ ーにつたえてあるので、みなさんの 意向とミックスしてできあがると思います」

AM. ここで石森氏のインタビューを終えて、飯島・鈴木プロデューサーからテーマについて聞いてみた。石森氏との打ち合わせでは、どのような話が出ましたか。

Takeyuki Suzuki.「オープニングについては、各 種楽器を多用して効果音を出したい ということでした。ゴダイゴを起用 したいという話からも、新しいイメ ージの世界を作りたいという意欲が わかります。ただ、こういうイメー ジをということで選んでいただいた 曲が、クラシックから現代音楽まで と幅広いジャンルからなので、はじ めはとまどいました。 カセットテー プ1本分ありましたからね。聞くだ けでもたいへんでした」

AM. 作曲家の決定については?

Suzuki.「オープニングとエンディング については、音楽ディレクターであ る日本コロムビアの木村さんをまじ え、やさしさのある人、ヒットメー カーであること、それに熱心さを買 って平尾昌晃さん。BGM・編曲に ついては、リズミカルな現代的なも のをもち、メロディックさをだせる 点に加えて、組曲までてがけたこと のあるオールマイティな人というこ とから、すぎやまこういちさんに決 定しました」

AM. BGMについてのイメージを。

Takashi Iijima.「チェロなどの弦楽器やめずらしい打楽器を多くつかう予定でいる。総体的にニューミュージックに近いもので、メロディックなものになるはずです。メイン12曲をふくめて60曲くらいをいま進行中です。」

アニメーションの登場人物は、実 写作品とことなり、画面の動きだけ でではなく、声のイメージでもち味 が大きく左右される。 “サイボーグ009” の声を例にと っても、旧作だけでも左の表のよう に劇場・テレビ用作品で声優がかわ っており、それぞれ作品のカラーを 出していた。今回の009役は3代目009と いうことになり、選定にもずいぶん 神経を使い、慎重に決定したものと 思われる。ここでは、声優決定まで の選定理由などについて、飯島・鈴 木両プロデューサーに語ってもらった。

AM. 旧作は意識しましたか。

Iijima.「前作の人たちのことはまったく気にとめずに決定しました。 ぼくは、前作では劇場用にタッチしていたので、なおさら新しい性格の009ということで、最初から声も新しくと考えていました」

AM. メインキャストの決まるまで、なにかおもしろい話はありましたか。

Suzuki.「石森さんが、ご自身のファン クラブの集会で会員から声優の希望 をとってみたといわれて、そのメモ をもってきてくれました。次の表で すが、というもので、キャクター性格よく理解し、声のイメージを十分つかんでいるリストで、われわれも同感なんですが、残念ながらこの人たちを起用すると予算の3倍くらいかかってしまうといったら、石森さんも苦笑しておりました」

Iijima.「そう、おもしろいキャスト表だと思いましたが、ふつうの作品でもレギュラーは5~6人くらいなんですね。それがメイン10人をふくめレギュラーが12名ちかくという大世帯で台所が苦しいんですよ」

Suzuki.「中堅でかためて、ベテランの味を期待しているわけです」

AM. みなさん青二プロの方ですね?

Iijima.「メインが10人もいるでしょ。 バラバラだと個々のスケジュールの 調整がたいへんだし、それとアフレ 時のチームワークのことを考えて、 すべて青二プロと決めました。いつ も顔を合わせている人たちだけのほ うが、声の吹き込むときの間だとか アドリブなど、微妙なところで、一 味、ちがいが出てくるんですね」

AM. チームワークということですね。ほかには。

Iijima. 「009役は、候補として水島裕、古川登志夫氏の2名にしぼってオーディションをしました。水島氏は甘い声、古川氏はきびきびした声と、質のちがった声をもっていたがのイメージから少しはなれているので再度、考え直して井上氏に」

AM. 慎重ですね。

Suzuki.「慎重というより、ていねいによい作品をというスタッフの情熱がそうさせたんじゃないかな」

AM. わかりました。 最後になにか一言ありましたら。

Iijima.「声優のスケジュール調整をして下さった青二プロの久保社長にここで”ありがとうございました!!!”と一言いっておきます」

●制作スタッフ 原作/石森章太 郎フロデューサー/小泉美明(テ レビ朝日) 飯島敬、鈴木武幸 (東 映)。監督/高橋良輔。作画監督 芦田豊雄。 製作担当/岩崎正美、 野崎欣宏(日本サンライズ) 脚本 辻真先、酒井あきよし。 ストーリーは原作の「エッダ編」 をもとに『宇宙樹編』をテレビ向 けに作る。オリジナルストーリー をくわえ、8月までの2クール (26 話)で制作を進行。 ●作品のキャッチフレーズは“キ イボーグ戦士誰が為に闘う”を採 「サイボーグ戦士誰が為に闘 う サイボーグ009」のタイト ルで視聴者にアピールしていくこ とになった。 ●たのしい作品を作るコツは、制 作者側もたのしむコト、とのこと でプロデューサー、シナリオライ ターなどが、各自すきな題材をも ちよって作ろうという話に。鈴木 プロデューサーは「ぼくはぜった 西洋の妖怪ものだね。ドラキュ ラなどをふくめて・・・」 と、ひとり 悦にいる。 ●作品に対する制作者側の力の入 れようのあらわれか。番組のはじ まる前に前夜祭をもってきて、あおることはよくあった。しかし一 度きりである。009ではこの前 夜祭を2週間にわたっておこなお うというのだ!!!

“The program is called “Anime de Fever” and will run from 7:00 to 7:30 on February 20 and 27, and will feature quizzes on 009 and anime.”

2月20日、27日の2週にわたり 7時から7時30分まで「アニメで フィーバー」と銘うち、009や アニメに関するクイズを中心に、 組んでいる。カメラは石森氏の仕 事場にまでのりこみ、仕事場の風 や石森氏に009の構想などを 語ってもらうなどアイデアを駆使 している。サイボーグファンなら ぜったいみのがせない時間となる だろう。乞うご期待!!!

Voice Actor Selections

Fan Table (Votes for who fans wanted to voice the characters)
001 白石冬美 (Fuyumi Shiraishi)
002 鈴置洋行 (Hirotaka Suzuoki)
003 岡真佐子 (Masako Oka)
004/伊武雅之/家弓家正 (Masayuki Ibu or Iemasa Kayumi)
005 飯塚昭三 (Shozo Iizuka)
006 富田耕生 (Kosei Tomita)
007/肝付兼太か飯塚昭三 (Kaneta Kimotsuki or Shozo Iizuka)
008 田中信夫 (Nobuo Tanaka)
009 井上和彦 (Kazuhiko Inoue)
Dr. Gilmore: ギルモア博士/柴田秀勝か納谷悟郎 (Hidekatsu Shibata or Goro Naya)
Narrator: 小林昭二か納谷悟郎(Shoji Kobayashi or Goro Naya)

Final Selections:

009: Kazuhiko Inoue
(Considered Yū Mizushima or Toshio Furukawa, went with a balance between the two)
[設定] 日本人の母とアメリカ人の父をもつ孤児。 ブラック・ ゴーストに捕えられ、改造手術される。 戦うことに疑問をもち ながらも、平和を願い、戦いつづけるやさしい少年。日本人。
[選定理由] ジョーは青年だが、大人になりきらない甘さがあ る。その感じを声で出せるのはと考えて井上氏に。水島、 古川 氏のどちらかとはじめ考えたが、2人をたして割ったような味 のある人をさがそう、ということで決定。

003: Kazuko Sugiyama
(Went with Sugiyama because of her warm, motherfly voice. Rihoko Yoshida was the runner-up for the role.)
[設定] クラシックバレエのプリマドンナ。00ナンバー・サイボーグの紅一点。争うことを心底にくみ、自分も有力メンバーであることを知りつくしながらも、出動をいやがる。ジョーとは恋仲。つねに心やさしい思いやりをみせる。フランス人。
[選定理由] フランソワーズはたいへんやさしく、温かみのある人物。声も杉山さんの温かく母親的やさしさのあるところをかいました。対立候補の吉田理保子さんは声が明るすぎて選外。

001: Sachiko Chijimatsu
(Remembered as one of the characters in 1966’s Sally The Witch and her ability to speak as an infant.)
[設定] 脳外科医であった父により手術を受け、テレパシー・テレキネシス・テレポーテーションなどの超能力を使えるようになる。ロシア人。
[選定理由] 「魔法使いサリーのカブ役」以後、のびてきた人で、幼児ことばがたいへん上手。器用な人なので、女性ゲストが登場するときなどは、おおいに二役をこなしていただくつもでもいます。

002: Keiichi Noda
(Selected because of a wide-range of voices and fitting with 002’s “Yankee” tone. The runner-up, Akira Kamiya, was not selected due to scheduling conflicts.)
[設定] アメリカで黒人よりもまずしいプエルトリコ系の移民。仲間をつれてニューヨークの裏町をほっつき歩くチンピラだった。劣等感が強く、おこりっぽい性格だったが、いまではチームワークをおもんじるようになっている。アメリカ人。
[選定理由] 非常に感がよく、声の幅も広くて感情やその場その場で声質を変えられる人です。ジェットのもつヤンキー気質もぴったり。対立候補の神谷明はスケジュールあわず選外

004: Keaton Yamada
(Chosen for his gentlemanly voice and demeanor. No opposition to this selection.)
[設定] 東ベルリンから西ベルリンへ恋人のヒルタをつれて逃亡を計るが、失敗。銃弾をあびせられヒルダを失う。ハインリヒは重傷を負う。ブラック・ゴーストの手により、全身武器の体に改造させられる。ニヒルなヒニクッぽい男だ。ドイツ人。
[選定理由] 山田氏は一見、紳士ふうで少しニヒルな役がヒッタリ。恋人を失った悲しみを秘めたハインリヒのドイツ人的感情をうまく出してくれるでしょう。対立候補者もなく決定。

005: Banjo Ginga
(Kosei Tomita was considered, but they wanted a voice who sounded a bit younger.)
[設定] アメリカ・インディアンの誇りをもって生きつづける勇敢な男。気はやさしくおだやかな性格だが、怒ると戦車でも軽くもち上げる無限の力を発揮する。アメリカ人。
[選定理由] 田中氏は体のわりに太い声を出す人でね。それでいて若々しい感じを与える声なのでマッチする。太いといっても富田耕生さんだと中年以上の声というイメージになってしまうからダメ。若く重みのある声をかいました。

006: Sanji Hase
(Gag character with a strong connection to 007 so wanted a voice that fit.)
[設定] 食べ物に目のない気の大らかな性格。中華飯店張々湖を経営している。007とはいつもペアを組み、ハメをはずしているが、漢詩などに避けいが深く、ときには自作の詩をうたいあげることもある。中国人。
[選定理由] 007とのからみの多いギャグ・キャラクターなので、ベテラン中から個性あるもち味のある彼を選びました。007の声に似ないような質のちがう人であることも重要視。

007: Kaneta Kimotsuki
(Wanted someone who could portray a wide range of emotions.)
[設定] シェークスピア俳優をめざしながら、酒におぼれる生活をおくっていた。 いまでもシェークスピアを語り、悲観論者的なところをみせる反面、ドジなところもあり、仲間を笑わせてくれる。イギリス人。
[選定理由] 006と漫才コンビであり、変身能力をもっているため、感情の変化ある役をこなせる達者な人ということで肝付氏をワキ役の重要性を視聴者の方に再確認させたい。

008: Koji Totani
[設定] アフリカで自分の民族独立運動をおこなっていたため、なかなかの博識 現在はケニアで動物保護官の仕事につき、動物と自然を守りつづけている。自分の黒い肌に誇りをもつケニヤ人。
[選定理由] ヒュンマがあまり暗い性格にならないよう、明るいイメージのある戸谷氏を選出。黒人の声の質はあうが、芝居のセンはもう一歩。じっくり育ててみたいと思ったのが理由。

Dr. Gilmore: Kousei Tomita
[設定] 元ブラック・ゴーストの科学者だったが、 世界征服に反対し、自分の作りあげた9人の試作サイボーグをつれて脱出研究所をもち、世界平和のため、日々、科学研究にせいをだしている。サイボーグたちの取りまとめ役。アメリカ人。
[選定理由] 太くて指導者的な重い声はヒッタリ。この人は声優の中の重鎮であり、リーダー格の人なので、アフレコ現場でのまとめ役としても期待。きびしいが、人柄もよくたのしい人。

Comment by Masaaki Hirao
どんな曲でも作曲するということは、 想像することに結びつきますが、ぼくにい とってサイボーグ009というテーマは あくまで大きく、遠くそして勇敢な若者 の夢をたくしたロマンであり、それをつ らぬこうとする力強い意志を、まず最初 に感じました。オープニング、エンディ ングテーマと2曲を作曲しましたが、壮 大な夢にかける若者の決断と、その裏側 にあるやさしさと夢とを対称的にとらえ メロディにたくしました。

Comment by Koichi Sugiyama
平尾さんの曲が親しみやすく、歌いやすい曲でしたので編曲もたのしくできました。親しみやすいメロディーを、サイボーグ009のもっている色にしあげるのぼくの役目。絵でいうならメロディは線で、編曲は全体の構図と絵に色をつける作業ですね。スケールの大きな力強い色をつけるというのがねらいでしたので、歌手の方のもち味を考えながら、オーケストラサウンドでやり、一味ちがえてみました。

Episode Summaries

よみがえった神々 (episode 1, 3/6)
世界各地で巨人が出現し、暴れま る事件が起こった。001は巨人 騒ぎの裏に強大な敵がいることを危 惧し、サイボーグ戦士に集合をかけ る。ギルモア研究所に集まった9人 は息つくひまもなく、巨人の現われ アメリカ西部へ向かうが。

「氷に眠る巨人」 (episode 2, 3/13) ノルウェーで氷詰めの巨人が生き かえった。ジョーは巨人のため父親 を殺されたペール少年を知り、巨人 と戦う。だが、ペールのはなったモ リが神の罠にかかり、あやまって漁 師を殺してしまう。神のしわざに怒 りをおぼえる009だが…

「凱旋門の鬼」 (episode 3, 3/20) サイボーグたちは、やっと自分の 敵についてわかりかけてきた。 レイ ガンで撃ち落とした巨人の手首は機 械そのものだった。巨人はロボット。 それなら神と名のるものたちは何者 か?謎は謎を生み出していった。 謎を解くために、007が手首に ばけ、巨人を罠にかける作戦を立て た。あんのじょう、巨人は手首を取 り戻しにあらわれた。

pg. 19: New Star of the Giants II

pg. 20-21: Animated Travels – Marco Polo’s Adventures

pg. 22: Future Robot Daltanious

pg. 23: Hana no Ko Lunlun

pg. 25-27: Space Battleship Yamato II

Interview with Noboru Ishiguro

AM. ついに大決戦”に近づいてきたと思うんですが、ズバリ、今後の展開は!?

Noboru Ishiguro. 「大ざっぱにいうと、いったん太陽系に戻ってきたヤマトは、地球への帰路、デスラーと戦うことになります。 で、 そのあと、大決戦に入る予定です。 この場合、いまのところ、映画とは設定を大はばに変えて、舞台を太陽系の外側のほうに移そうと考えています。 火星から土星へ、土星から天王星へとか。というのも、そうしたほうが、話が大きくなりますからね」

AM. いま、 デスラーの話がでたんですが、やっぱり、映画と同じように、 デスラーは、大決戦の前に死ぬわけですか?

Ishiguro. 「これが、一番むずかしい問題なんですよね。 ファンの方からは、毎日のように「また、殺す気か?」(笑)なんていう手紙が殺到していますしね。正直いって、まだ決めていません。ただ、これだけはいえます。 18話(2/10放映) と19話(2/17放映)では、ヤマトとデスラーが、おたがいの総力をあげて戦います。 その際、これはまだ、秘密ですけど、デスラーの新戦術を考えています」

AM. 話は少し前に戻るんですが、幽閉されているデスラーはどうやって脱出するんですか?

Ishiguro.「それは、デスラー艦隊が彗星に突入して救出します」

AM. ところで、そうしますと、大決戦は、20話(2/24)からということになるんですか?

Ishiguro.「そうですね。予定では、20話でバルゼ艦隊が太陽系に突入し、両軍とも土星決戦を決意することになります。両軍の布陣が開始されるわけです。 で、 ヤマトも太陽系に帰還し、地球艦隊に合流。21話(3/3)でいよいよ作戦始動、両軍先峰の戦闘がはじまります」

AM. 地球艦隊の指揮はだれがとるんですか?

Ishiguro.「土方です。 20話で、土方と古代が再会しますのでドラマ的には20話以降、土方の描写がふえますね」

AM. では、最後にお聞きしたいんですが、 ラストは、映画と同じですか?

Ishiguro.「それは残念ながら、ラストまで待ってください。それに第一、そこまでは、まだ決めていませんよ」(笑)

pg. 28-31: Gatchaman II

pg. 32-36: Galaxy Express 999

pg. 37-48: Animation World on TV

Covered series:

  • Lupin III Part II
  • Zenderman
  • Anne of Green Gables
  • Julie the Wild Rose
  • Candy Candy
  • Treasure Island
  • SF Saiyuuki Starzinger
  • Space Pirate Captain Harlock
  • Yakyukyô no Uta
  • Ikkyū-san
  • Hoshi no Oujisama Petit Prince
  • Pink Lady Monogatari: Eikou no Tenshi-tachi
  • Captain Future
  • Manga Sekai Mukashibanashi
  • Dokaben
  • Manga Kodomo Bunko
  • Daitarn 3
  • New Aim for the Ace!
  • Manga Hajimete Monogatari
  • Manga Nippon Mukashibanashi
  • Haikara-san ga Tooru
  • Kirin Monoshiri Yakata
  • Hirake! Ponkikki
  • Hokahoka Kazoku

pg. 49-51: Animage New Screen Guide (The Nutcracker, Taro the Dragon Boy, Heidi)

Screenshot

pg. 52-55: Encore Anime #7 – Babel II

pg. 56-79: 16-Year History of TV Asahi Anime

Panel:

Shinichi Miyazaki
Yoshifumi Hatano
Yugo Serikawa
Daikichirō Kusube
Sadao Tsukioka

1. 夏の盛り、氷をぶっかきながら作った「狼少年ケン」

Shinichi Miyazaki. きょうは一応、私が司会役ということで話のカジ取りをさせていただきます。よろしくお願いします。 月岡さん、久しぶりですが、ちっとも変わらんね。「狼少年ケン」以来だけど、ちっとも変わっていない(笑)。

Sadao Tsukioka. 16年ぶりですよね。ちょっとふとったでしょう。

Miyazaki. あのころはいそがしくて、ホホがこけて死にそうな顔してたけど(笑)。ヒゲぼうぼうで、ゲッソリしちゃっていたよ。徹夜も多かったしね。ところで、テレビ朝日のアニメ処女作といえば「狼少年ケン」ということで昭和38年11月25日からスタートしたわけだよね。われわれは東映動画と非常に密接な関係があって、東映動画の伝統と実力に全面的におんぶしてきた。「白蛇伝」「少年猿飛佐助」「安寿と厨子王丸」「シンドバッドの冒険」そして「わんぱく王子」とヒットした東映動画の伝統をふまえてスタートを切ったわけです。まず草創期の話からはじめましょうか。

Yoshifumi Hatano. なにしろ16年前ですから、記憶も薄れかけてるんですが、とにかく手塚治虫さんの「鉄腕アトム」が出て「鉄人28号」が続き、それから「エイトマン」が出た。そのころ東映動画はいま宮崎さんがいわれた一連の長編アニメをやってきて、さてここらでなにか新しいことをやらなきゃいかんということになったわけです。そこで、当時のNET (現・テレビ朝日)からアメリカとの合作をやらないかという話があったのをきっかけに、じゃあ思い切ってテレビアニメをやろうかということになりましてね。

Daikichirō Kusube. 「狼少年ケン」になったいきさつはどうだったっけ?

Hatano. あのときはちょうど「わんわん忠臣蔵」が東映動画の劇場用作品で封切られる時だったんです。そこへ会社からテレビの話があって、しかも動物ものがいいんじゃないかという。その要員に、月岡さんの名まえが一番にあったわけですよね。

Tsukioka. 話があったとき、ぼくは「シートン動物記」をやりたいと思ったんだけど、これには著作権がある。で、いろいろ考えているうちに…。

Hatano. むかし、学生のころ習った民族学の話で「カマラとアマラ」というインドの話を思いだしたんです。女の子が狼に育てられて10数年後に人間社会に戻ったっていう民話でね。じゃあ、それでいこうということになった。

Tsukioka. あのころのこと、思いだしたくないなあ(笑)。

Miyazaki. 思いだしてもゾッとするね。

Yugo Serikawa. もう殺されるんじゃないかと思ったけど、やっぱりぼくなんかも「少年」が一番なつかしいね。ぜんぶ自分でシナリオ書いて、自分でやってましたから。いま思うとかなり荒らっぽかったけど、やっぱり自分の思うものが表現できたという印象がありますね。

Kusube. あの元・会議室 (東映動画の)だったところでやってたのは何話ぐらいまでだったっけ。

Tsukioka. ずいぶんやってましたよ。 ワンクール以上やったんじゃないかな。

Hatano. 暑かったねえ、あそこ。 クーラ-がなくてさ(笑)。しょうがないからでっかい氷を買って来て、ぶっかいてね(笑)。

Tsukioka. あの部屋でいま「Gメン75」をやってるんですよね(笑)。けど、当時、1週間に2回は完徹だったな、おれなんか。

Miyazaki. ほんと、よく徹夜したね。ヒゲはやして目をショボショボさせて…。

Tsukioka. あのころは若いからそれができた。でも、ぼくは倒れたことがあるんですよ。あとにも先にもあれ1回きりだけど、下宿まで会社の車が迎えに来てね。すっかり有名になっちゃった(笑)。十二指腸潰瘍でね、東映撮影所の食堂でおかゆつくって持ってくるから会社へ来いっていうわけ(笑)。

Miyazaki. それほどあなたはかけがえがなかったんだよ。 しかし、ある意味では奴隷労働だったよね(笑)。しかし、それだけ死ぬ思いの苦労を重ねただけあって、あの作品はケン、チッチ、ポッポ、ブラック、片目のジヤック、 まぬけのクマ、トラのキラーと、どれもとにかくぜんぶ人気キャラクターになったでしょう。それだけ魅力があったと思うんですよね。あれ以後、あれに匹敵するキャラクターというのは出ていませんよ、少なくともわが社では。

Tsukioka. オリジナル”では出ていないというだけじゃないですか。

Miyazaki. その秘密は、まあ月岡が天才だったといえばそれですんじゃうけどね(笑)。天才月岡としては、どうしてあのキャラクターが人気者になったと?

Tsukioka. 「バックスバニー」がおもしろかったでしょう。あれですよ、ほとんど。「バックスバニー」のゲームなんです。いろんなキャラクターが出てきて、やっつけたりやられたり、ヒントはあれだったような気がします。

Serikawa. やられ役のクマとかトラが売れっ子になっちゃったのも、めずらしい例ですよね。クマなんか毎回なにかいいながら崖から落っこっていくんだよね。「また落っこちるのイヤー!」とかいいながらね。

Miyazaki. しかし、はじめて動画に行ったときの印象は、月岡さんや楠部さんがヒゲはやして、まなじり吊り上げて仕事やりょうざんぱくってたから、梁山泊みたいだった(笑)。 Tsukioka. あのころの動画の連中っていうのは、みんなワイルドな男ばっかりでしたからね。

2. 1人で原動画をぜんぶ描いたこともあった「フジ丸」

Miyazaki. 「ケン」が大変好評で22・6%の視聴率をあげたりしたもんですから、第2作目を作ろうじゃないかということになりまして、当時1時間もののドラマのほうで忍者ものがブームだったので「少年忍者風のフジ丸」という線が浮かんできた。東映動画では「少年猿飛佐助」を作った経験もありましたからね。

Hatano. 原作の白土三平さんは当時、教祖的な人気を博していたんです。まあテレビアニメとしては、ちょっとブラウン管に乗りにくい点もあったけれどもね。

Miyazaki. そうなんです。そのへんのところで、ある意味ではなかば白土三平原作半ばオリジナルという形で「フジ丸」がスタートしたわけです。

Kusube. あのときは、ほんとは「サスケ」をやりたかったんですよね。それが局サイドの事情でできなくなって、白土カラーをなんとか残したかったけれど結局、あまり残せなかった。

Miyazaki. どちらかといえば、楠部カラーといったほうがいいような形になってきたわけです。「影丸」が「フジ丸」に変わった理由はごく簡単な話で、 スポンサーがフジサワ薬品だったんです。(笑)。ウチとしても名まえが名まえだけに少し悩んだんですがね(笑)。

Serikawa. だから、あのときのスポンサーがフジサワ薬品だっていうことだけはいまでもみんなおぼえていますね。

Miyazaki. というのも「狼少年ケン」が好評だったせいもあって、セールスにかかる前にスポンサーがついたという事情があったんですよね。すでにその時点で、なにがなんでも 「フジ丸」にという要望があったわけです。

Tsukioka. テレビ・アニメの創世紀にはスポンサーがつかなくて、あきワクというのがずいぶんあったしね。それで、全ワク買い切りスポンサーの発言力というのは当時はたいへんなものだった。いまはほとんどがあいのり (共同提供)だからさほどではないけど。

Hatano. それにしても、第1作から第2作へ移っていったあのころ、アニメになれないから、 どうやって作ったらいいかと、あれこれ苦労の連続でしたよね。失敗談も山ほどある。 Kusube. いまではもうなんでもない手法が、あのころはぜんぶはじめてだったもの。「フジ丸」を作るときも3コマ撮りがまずはじめての経験だった。1秒24コマのところを3コマ連続撮影で8コマですますことができるなんてね。たとえば「フジ丸」で木の葉がバアーッと舞うシーン。いまなら3枚か4枚でまわしちゃうのに、当時は何10枚という絵を描いていたんです。 で、 それだけ苦労しても効果は非常に薄い。これを3枚で束にしてまわして繰り返しにすればいいんじゃないかって気がつくまでに 「フジ丸」がはじまってから3か月ぐらいかかっちゃった。 Hatano. 3コマ撮りなんて邪道の邪道といわれていたからね。

Miyazaki. 「アトム」ではすでに使っていた手法なんだけど・・・。

Kusube. でも「アトム」を作ったのは東映動画から出て行った人たちだったから、東映は東映というプライドがあった。

Miyazaki. その意味では本家意識がある。あれ以上のものを作らなきゃならないという使命感ですね。なにしろ、日本の動画の本家本元がテレビに初進出だという意識がね。 Serikawa. しかし、3コマ撮りのはじめのうちは、からだが止まっていて口だけが別セルでパクパク動くっていうのが気になって気になって・・・。ほんとにこれていけるのかと・・・。 いまじゃあたりまえになってるけど。

Miyazaki. なんとかしてるって感じだね。しかし、あの当時は作画がまに合わなくなって、楠部さんなんか1人で原動画やったことありますね。

Kusube. ぼくは「フジ丸」の後半は、人で原動画月1本書いたことありますよ。

Miyazaki. スーパーマンだね(笑)。

Kusube. 「フジ丸」をはじめるときは、ちゃんと原画を描けるのは1人だけだったんですよね。あとは東映動画で2か月の養成を終えたなにも知らない連中が20人ぐらいいましたかね。いま思うとほんとに冷やあせがでる(笑)。

Hatano. 話がわりとリアルっぽい話だからいっそう苦労したんですよね。ぼくは直接の担当じゃないんだけど、たとえばハーモニー方式”というのをやったでしょう。

Kusube. そうそう。背景はあまり輪郭をはっきりさせないように描いといて、鉛筆の線で描いた原画みたいな感じのやつをセルで、ゼロックスでとるわけです。それを背景の上に乗っけるわけだ。こうすると、絵と背景が違和感なく共存できる。ディズニーの作品ではだいぶやっていましたね。

Serikawa. 「1匹ワンちゃん大行進」とかね。

Kusube. それから 「フジ丸」 じゃ、 一番最初に人を斬る場面があって、テレビコードのことで苦労もした。 血を飛ばしちゃいけないとか、斬るところを見せちゃいけないという制約があってね。はじめての制約で頭を悩ましたっけ。

3. いろんなジャンルにはなやかに展開したその後の作品群

Kusube.「フジ丸」の第1話はカラーでつくったのですよ。

Serikawa. カラーでつくりましたね。356ミリカラーでね。

Miyazaki. あれはどうして? モノクロで放送されるのわかっていたのに。 輸出ねらいだったのかな。

Hatano. いや、劇場でかけようという魂胆だったんじゃないかな。それにしても、創世紀はいろい。

Serikawa. ろとあったっけ。「狼少年」のときに、いまだに忘れられないんだけど、 真夜中に背景が1枚どうしても見つからないんですよ。当時はいまみたいにきちんと整理していなかった。テーブルの上に山のように背景が積んであってね。そしたら、進行さんが1人いないんです。「あんちくしょう、どこ行ったァ!またサボって寝てやがんな」なんていいながら、しばらくしたら「あったァ!!」っていう声がしたんですよ。そしたら、背景の山の中からムクムクムクと背景を持った手だけ出てきたんです(笑)。もぐって懐中電燈で捜していたんですね。

Miyazaki. そういう文字どおり手さぐりの創世紀から1年、現在の「ハーロック」(4作目)までつづいてきた。で、ふりかえると、テレビ朝日のひとつの特徴としては、よくいえば非常にバラエティに富んでいる。悪くいえば、なんでもやってきたということだと思いますね。象徴的なのは、第1作が動物ものでスタートして、第2作が忍者もの、第3作が宇宙もの「宇宙パトロールホッパ」で、第4作が「ハッスルパンチ」です。これは動物ものといっても「狼少年」とはまたちょっと違った形の動物ものなんです。

Tsukioka. 「狼少年」よりもっと動物を擬人化した動物ものですね。ディズニー寄りというか、ハンナ・バーバラ寄りっていうか、そういう動物もの。

Miyazaki. その意味で、すでに第4作で4つのジャンルをやっているわけですね。このあと「レインボー戦隊ロビン」という、いわばスーパーヒーローのSFものがあって、つぎが「海賊王子」という海洋アクションもの。これもやっぱり新しいジャンルです。そのつぎが「魔法使いサリー」という少女ものです。これなんかいまでも7~18%の視聴率をかせいでいますね。

Serikawa. なつかしい作品ですね。

Miyazaki. 「サリー」は女の子を主役にしたアニメーションとしては、日本ではじめてだと思います。あのころドラマで「奥様は魔女」というのをやっていまして、調査の結果、驚いたことに子どもの視聴者が一番多かったわけです。これはひょっとしたら、アニメで魔女の出したらいけるかもしれないというのでスタートした。これも、わりあい作家のみなさんに自由につくっていただいて、しかもシリーズにピタッとはまったという作品だと思います。

Hatano. 芹川さんは「サリー」やりまし。

Serikawa. やりましたよ。 20話からあとです。あのころのやつは、たいてい1本はぼくの脚本でやってるんじゃないか。

Miyazaki. そのつぎが「花のピュンピュン丸」という、これもまた非常にユニークな作品です。つぎが「サイボーグ009」。これはことしまた、わが社で復活しますが、ある意味では石森章太郎の代表作でもあり、あるいは東映動画、あるいはテレビ朝日の代表作ともいえる作品だと思うんです。

Serikawa. これは劇場用は旗野さんかな?

Hatano. 両方ともそうなんです。 あの作品はみなさんの支持が多いんだけど、当時は視聴率上がらなかったですね。

Miyazaki. いや、あれは100年早すぎたんですよ。あるいは5年、早すぎた(笑)。

Hatano. なるほど(笑)。

Miyazaki. でも、視聴率は1%ぐらいだったし、悪くはないですよ、けっして。

Kusube. 当時はとにかく20%いかないと文句いわれたからね。

Miyazaki. サイボーグ」は非常に新しさがあったんですね。それで、ちょっとついて来にくいところがあったのかもしれない。テーマがね。

Hatano. それと、やっぱりターゲットが少し上だったのかもしれないですね。こんど10年ぶりに衣を新たにして出てくるわけですが、当時小学校1年生だった人がいま高校1年ぐらいですね。そういう初期のファンを吸収できると同時に、新しいファンもつかめるわけですね。

Miyazaki. 「ひみつのアッコちゃん」は「サリー」の路線としてヒットした作品です。それから「もーれつア太郎」。ニャロメで大あたりしましたね。このあと、わが社としてははじめてのスポーツ根性もの「アパッチ野球軍」を入れるわけですが、このへんでアニメのラインアップみたいなものはひととおりぜんぶやりつくしたという感じになってるんじゃないかと思います。そのつぎに「カリメロ」がありますが、これはちょうど「ア太郎」と対照的な作品でしたね。ほめられてほめられててれくさくなるほどほめられた作品です。視聴率はさほどじゃなかったけど、内容的には評判がよかった。

Hatano. 永井豪作品は「デビルマン」が最初だね。彼がいちばん油ののりきっていた時期じゃないかな。

Miyazaki. まだ「ハレンチ学園」を連載していたころで「デビルマン」は非常におもしろくてヒットもしました。反面、非常に世の中の非難を浴びた作品でもあります(笑)。

4. テレビ朝日のアニメにはひとつのカラーがあった!!

Miyazaki. ここらでしめくくりとしてテレビ朝日、つまり東映動画の作品が多いんだけど、そのテレビアニメのカラーはなんだろうかという話にしましょう「カリメロ」のあとで、うちである種の新しさを出して成功した作品というのは「一休さん」なんです。これも東映動画なんですよ。「一休さん」も非常に笑いがあって、浪花節があって人情ドラマであるという、いわば典型的な東映ムードじゃないですかね。「狼少年ケン」からはじまって「一休さん」「キャンディ・キャンディ」にいたるヒット作品の基本的なキャラクターは、やっぱり東映動画が「白蛇伝」以後、持っていた笑いと涙と友情、人情といったものなんですね。

Serikawa. そうですね。その下地みたいなものがやしなわれていたということはあるかもしれませんけど、それが芽になって出てきたのは、やっぱりテレビがいちばん強く出てきたんじゃないですか。

Miyazaki. そういうのがテレビ朝日では基本線になってるわけですね。これはじつをいうと東映動画の基本線と同じなんです。

Tsukioka. やっぱり、東映動画の伝統みたいなものがひとつありますね。伝統というのは、おもに技術的なものを中心にして築かれているだろうと思うんですけど、作品の方向というのは、そのつど担当する人によって、かなり個性というものが入ってきているんじゃないでしょうか。

Miyazaki. 第1作の「ケン」と第2作の「フジ丸」というのは、月岡さんと楠部さんの歴然たる個性の違いがありますね。にもかかわらず、さっきいったような点に共通性があるということでしょうかね。

Tsukioka. あとひとつは、宮崎さんプラス、テレビ朝日の立案によるオリジナルということがあるでしょう。

Miyazaki. これも、ある意味でいえば、東映動画の伝統といっていいと思いますけど、われわれサイドからいえば、 オリジナルでもいけるんだという安心感があるんですね。これは東映動画サイドからいえばオリジナルでいいものをつくってみせるぞという自信にもなっているんじゃないかと思うんですが、そのへんはどうですか。

Tsukioka. それは相互作用でしょうね。ほかの局はそれができるかというと、やっぱりいちばん信頼に足りるところといえば東映しかない。それで、東映動画とテレビ朝日が、わりあいにおたがいのカラーを出しあって2人3脚でやってきたということはあるでしょうね。ほかの局は、どっちかといえばマンガの本に頼っているところが多いんじゃないですか。

Miyazaki. 特に初期のころはぜんぶオリジナルですもんね。

Tsukioka. あれはたいしたもんですよ。 テレビは“文化”をつくらないというけど、あれはやっぱり文化をつくっているんだよね。

Kusube. ぼくなんかは東映を出て、東京ムービーと組んで「巨人の星」からずっとやってきたわけだけど、その後何人も優秀な人たちが東映から来てくれてますから、やっぱり東映動画の伝統をそのまま引き継いだ形で、東京ムービーの作品は「天才バカボン」までやってきたわけですよ。あそこでいちおう段落がついたところで、東京ムービーをはなれたわけですが、そのときに育った連中が「キャンディキャンディ」とか「一休さん」へ流れたわけだから、技術的な伝統というのは、東映の伝統がひとつまわって流れていると思うんですよね。

Tsukioka. それは虫プロも同じじゃないですか。技術的伝統はほとんど同じといっていいけれども、やはりテレビ朝日東映動画の信頼関係ですね。オリジナルができるんだという。そのへんの違いでしょうね。だから、企画者であ宮崎さんみたいな人の違いですよ。

Hatano. それと、東映動画はやっぱり映画の伝統ですよね。マンガから入っていないんですよ。手塚さんの場合はどうしてもマンガから入っちゃうでしょう。まあTCJは別格だけど、竜の子プロもマンガから入っちゃうんですよね。ところが、東映動画はやっぱり映画から入っちゃうのね。特に劇映画から入っちゃう習性みたいのがあるんじゃないかな。

Kusube. それは大きな違いでしょうね。東映出身の演出家は、やっぱり基盤を映画においていますからね。虫プロ関係の人とのいちばん大きな違いだね。

Serikawa. 虫プロ系で育ってきた演出の人と話しますと、東映動画のそういうドラマ的な基盤を非常に高く買ってくれるんですね。ところが、こちらサイドからみると、やっぱり絵のイメージのとらえ方みたいなものを逆に勉強しなきゃいかんなと思う面があるんですよね。そういうところから出てきたんじゃないかと思うけど・・・。ただ、そういう面に、いままでテレビ朝日系でやってきたうちの作品というのはマッチしてたということがいえるんじゃないですか。そのいちばん顕著な例が「魔法使いサリー」「魔法のマコちゃん」あのへんですね。

Miyazaki. テレビ朝日のアニメ16年といえば、とても2時間や3時間では語りつくせないけど、これまでの話で大筋はつかめるんじゃないでしょうか。きょうはみなさん、おいそがしいところをありがとうございました。

pg. 81-98: Golden Warrior by Yuki Hijiri (Part 9)

pg. 99-114: My Animage

pg. 117-119: “Seiyuu 24 Hours” #9 – Nachi Nozawa

pg. 120-121: Biography of an Anime Person – Yoshiyuki Hane

pg. 122-123: “Lupin’s Musings” (Yasuo Yamada)

pg. 126-127: History of Animation Composition #8

pg. 128: Hisashi Katsuta’s Introduction to Voice Acting #8

pg. 130-133: Anime College (Shinichi Suzuki, Emiko Okada)

pg. 134-135: “Just a Word” (Masaki Tsuji)

pg. 136-142: Fan Plaza

Next issue on sale 10 March 1979!

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