Akemi Takada

1981

November

Roundtable [for Urusei Yatsura, Animedia, w/ Kazuya Uenashi, Shizuo Kawai]

出席してくださったのは『うる星やつら』 のキャラクター・デザイン高田明美さん、『ま いっちんぐマチコ先生』の作画監督の上梨一 也さん、そして「ダッシュ勝平』の作画監督 河合静男さんの3人。さて、いかに迫るか!?!?!! スタッフ対談!!

AN. お忙しいところ、ありがとうございま す。まず、この3作品は、すべて原作の絵が あるわけですが、それをアニメ化する時のご 苦労などから、お話していただきたいと思い ます。

Takada.『うる星』の絵は、私自身の絵と近い感 じですので、それほど苦労しませんでした。 それに、毎週ゲストキャラなどを描くわけで すから、なれてきますしね。ただ『マチコ先 生』のメインキャラも、私がやらせていただ いたのですが、あの時は学研さんまで行って、 打ち合わせの上、1日で描いたものですから、 さすがに疲れました(笑)。

AN. すみません。人使いが荒くて(笑)。

Uenashi. デザインの時に問題になるのは“等身” ですね。マンガは、コマで見せますから、伸 び縮み自由ですが、アニメはフレームが決ま っていますから、人物の等身も決めないとね。

Kawai.『勝平』の場合、主人公は2等身から2 等身半と決まっています。これ以上、大きく はしません。体も表情のひとつというわけで、 表情をその2等身半全体で、表現するわけで すね(笑)。

それぞれの原作の イメージを大切にしたい

Kawai. キャラもそうですけど、全体のムード、 原作のイメージを大切にしたいですね。 『勝 平』も、原作者の六田(登)さんのりょう解を えて、イメージをこわさないようにアニメ化 したわけです。ひとつの作品のムードをこわ さずに、アレンジしなければならないのが、 むずかしいですね。

Uenashi. 同感です。 キャラを振りむかせること ひとつにしても、マンガの絵にはない絵が必 要になるわけですが、それ一枚だけとると、 まるで違った顔になっちゃう。 でも、動きと して、ムードをこわさないようにしています。 また、演出の人も、映像としての実在感を求 めてきますから、あらゆる角度の絵が作品と して異和感があってはならないわけです。

Takada.でも『マチコ先生』なんか、下からア オると苦しいですよ(笑)。

Kawai. うち(竜の子プロ)でも実在感をいち ばんに考えています。あまりデフォルメして いくと、別世界のものになっちゃう。また逆 に、いくらくずしても、そ の原作のムードや実在感が あればいいと思っています。

Uenashi. さきほど等身の話が 出ましたが、話によっては マチコ先生なんか伸び縮みしますよ(笑)。 カメラの動きにあわせて、それなりにで すが。

Kawai. シリアスものなんかは、絵を描く目的 というのがはっきりしていますよね。本格的 なデッサンで、というか……。でも『勝平』 なんかのギャグものとなると、かなりくずす でしょう。それも、くずしてもきたなくしち ゃいけない。だから、むずかしいですよね。

Uenashi. それは言えますね。品よくしたいんで す。ま、自分たちに品があるかどうかは別と して(笑)。絵描きとして、理想というか、常 にいいものを求めるという部分ですね。

AN. 今、品よくというお話が出ましたが、 お色気の方も、やはり品よく……?.

Uenashi. (高田さんに) ほら、あなたは、両方(『マ チコ先生』と『うる星』)のキャラクターを 描いたんだから最初に(笑)。それに、女性の 意見を聞きたいな。うちの若いアニメーター の女の子なんか、ある意味で拒否感を持って いるみたいですよ。「こんなかっこうして、い やだわ」なんて。

Takada.どちらかというと、邪心がないだけす なおに描けましたよ。

Uenashi. なるほど。邪心なく、マチコ先生を自 分に見立てて(笑)。

Takada. ええ(笑)。いえ、絵としてフォルム の追求を。でも、色っぽく、かわいく描こう としました。もっとも、それを決めるのは、 見ている人ですから、自分なりには理想に近 い形で、きれいなかわいい形にしてあげようと。

Kawai.「勝平』でも、あかねちゃんは、色っぽ さを出していきたいですね。今までと違って あまり大人っぽくなく、カラッとしたお色気 で。たとえばスカートをめくられても「キャ ー」 なんて言わない。笑って受けとめるよう そんなサッパリした描き方でいきたいと思います。

Uenashi. それは『マチコ先生』の方針も同じで すね。スカートめくって下着を見るのがテー マじゃないわけです。ま、男ってのは、女の 人に興味がある――これは、純粋なものだと 思いますよ。だから、そういったお色気の部 分は、やはりカラッといきたいですね。

AN. 男には、いつまでたっても、そういう 気持があるようですね(笑)。

Uenashi. 見たい、というね。でも、おばあさん はご遠慮したいですね(笑)。

ファッションだってグ~ンと 新鮮に、ショッキングに!! 思います。 キャラクターのファッションも、見る 側の楽しみのひとつですが、やはりいろいろ と考えておられるのでしょうか。

Uenashi. その点『マチコ先生』は大変です。 ア ニメーターの女の子が、女の子は1日ごとに 着がえるんだからと言ってきました。服装は どんどん着がえさせようと思ってます。

Takada.、大変ですね。

Uenashi. 着せかえセルなんか考えなくちゃ(笑)。

Takada. 実は、ラムちゃんも、ビキニだけでは ないんです。2クール目ぐらいから、他のフ ァッションも着せようと思っています。

Kawai.「勝平』は、ファッション性という点で は、あまり苦労はありませんが、先ほども言 った実在感という点では、季節を出すように しています。

Takada.でも、本放送で季節を気にして描いて も再放送ともなるとメチャクチャですね(笑)。

Uenashi. そりゃ、無理だよ(笑)。

Takada.ですから、同じ冬服を考えるのでも、 ポッテリしたものはさけて、スリーシーズン タイプみたいなファッションを考えるんです。 もっとも、ラムちゃんは冬でもあのビキニで すけど。あたるが「よく寒くないな」と言う と「きたえ方が違うっちゃ」なんてセリフが 返ってくるんですよね(笑)。

Uenashi. しかし、下着を出すというのも、男と しては大変でしてね。いつかマチコ先生の下 着が干してあるシーンを描いた時、女の子の アニメーターから「あんなに大きくない」と クレームがついたんです(笑)。それで「では、 君のを見せてくれ」と大笑)。

Kawai. 勝平は、どんなかっこうをしてもかわ いらしさが出せればいいんじゃないかと思っ ています。まあ、時には『マッチ売りの少女』 にふんしたり、体操のコマネチみたいなかっ こうをしたりしますよ。でも、勝平は何を着 てもダボダボなんですよね(笑)。そのダボダ ボになってズリ落ちそうな衣裳を生かした ポーズを描きたいですね。

スカートをめくるシーンは 普通のシーンより楽しいか?

AN. 高田さんは『マチコ先生』と『うる星』 を手がけられたわけですが、男性作家のお色 気と、女性作家のお色気の違いというものは 感じられましたか。

Takada. あまりないと思います。

AN. 男も女も、考えることは一緒(笑)。

Takada. いえ、違うとは思いますけど……。 た だ『うる星』に関して、よく男性が「出てく る男がみんなアホなのは、男を馬鹿にしてい るんじゃないか」なんて言いますけど、原作 者と同性の私としては、そうは思わないんで す。あれは決して男を馬鹿にしているのでは なく、愛情をもって描いていると思うんです。 あたるなんかどうしようもないアホですけど、 彼は作者に愛されているんじゃないですか。 男に敵対していると見られるのは、困ります ね。

AN. 今、あたるがアホという話が出ました けど、勝平なんかも、かなりアホをやってい るんじゃないですか。

Kawai. 彼は、ただ一生懸命なんでしょうね。 決して、人を笑わせようなんて思っていない。 これは、スタッフのみんなの意見でもあるん ですけど、あの小さな体で必死になってやる 姿が、結果としてこっけいに見えるわけです。 それと、いろいろな秘技を使うからといって、 彼はスーパーマンではないですね。運動神経 は発達していますけど、やはり努力を重ねて いるんです。

Uenashi. チャップリンなんかも言っていますが、 喜劇っていうのは、他人の悲劇なんですよね。 笑わそうと思って演じるのは喜劇ではなく、 笑われたくないのに笑われるのが、いちばん 本物の喜劇でしょうね。アニメーターの場合 は、笑わせようと思って描いているわけです から苦しいですね。

Kawai.勝平には、ぼくたちができないことを かわりにやってほしいですね。

Uenashi. アニメーターの楽しみといったら、そ れですよ。

Kawai. ええ。まあ、言わば”楽しみと苦しみ” でしょうか(笑)。でも、作品にはすごくノッ てますよ。

AN. 私たちが思うに、歩いているシーンや 勉強のシーンなんかより、更衣室をのぞいた り、スカートをめくるシーンの方が楽しく描 けそうな気がするんですが(笑)。

Uenashi. 日ごろの夢がかなったりして(笑)。

Kawai. まずどんなフィルムか見てください! と言うしかないですね。

Uenashi. 『マチコ先生』は、たまたま2本上がっ ているんですが・・・・・・。

Takada. あら、まだ見せてもらえないんですよ。

Uenashi. ところが、フィルムになってみると、 意外な面が見えてくるんですね。はっきり言 うと、あまりにも上品すぎる(笑)。下着が見 えるシーンも、すごくおとなしいんですよ。 これは、アニメーターに女の子が多いし、原 画の方でも押さえよう、押さえようとして (笑)、こうなったんでしょうね。一枚一枚の 絵を止めて見れば、ドキッとするんですが、 フィルムは流れていますから、チラッだけな んです。で、次回からは、もう少し、その、 なんだと(笑)。

Kawai. スカートをめくる話が出たんですけど、 それは昔、すごいブームとなりましたよね。 それを今やっても、新鮮じゃないですよ。 ス カートの中ばかり追求しても、二番煎じでし かない。同じようにスカートはめくりますが、 今までと違った何かを出さないとね。

Uenashi.それは『マチコ先生』でも同じです。 スカートめくりがテーマじゃない。子どもた ちも、それはマチコ先生に接するための手段 なんですね。で、たまたまマチコ先生という のは、先生になりたての不安定なところもあ るけど、持ち前の明るさでなんでも解決して いくというキャラクターでしょう。子どもた ちも先生にタッチして、その反応が明るいか らもっと接したくなる。そんな先生がいたら ぼくらも今ごろは、もっと気軽に女性に接す ることができたと思いますね(笑)。

Takada. まあ、えらい夢を持ってますね(笑)。

AN. 原作とアニメの違いについては、みな さんどうお考えですか。

Kawai. それは、最初からありますね。しかし さっきも言ったようにムードは大切にします。

Uenashi.材料をどう料理するかということに、 似ているんじゃないですか。

見てくれた人の感じたものが この作品のお色気だと思う

AN. ズバリ、アニメの色気っていうのはな んでしょうか。(色気に執念を燃やしている)

Takada. また(笑)。 どうも誘導じん問みたい (笑)。あの、『うる星』の場合、お色気よりも、 精神的にとんでる面白さみたいなのを楽しん でほしいと思います。

Uenashi. まあ、この3作品の中でお色気に関し ては『マチコ先生』は、意識して描かなけれ ばいけないでしょうね。なにかこわいけど (笑)。それはもちろん、テーマを描く上の手 段ですが、かなり考えないといけないでしょ うね。

Kawai.「勝平」では、その物語の中にたくさん の女の子がいて、そのひとりひとりにかわい らしいお色気がある という感じで描きま す。また、アニメのお色気というのは、見て くれた人が「色っぽいな」と思ったところが、 そうだと考えてくれればいいんじゃないでし ょうか。ぼくたちとしては、お色気を出そう と描いてはいませんし。

Uenashi.うん。いい回答ですね。

楽しみはまだまだ続くよ さあ、キミもテレビへダッシュ!

AN. ところで、それぞれの作品の見どころ、 また、おすすめの話数などを教えてください。

Uenashi. 『マチコ先生』は、流行なども取り入れ ます。2話では、スケートボードなども登場 しますし、フリスビーでマチコ先生のスカー トにアタックするなんてアイデアも出てます。 あ、それから、7話ではケン太たちが、ツッ パリスタイルで、ギンギンに活躍しますから 楽しみにしていてください。

Takada. マンガではよく、中のシーンを抜いて 描く手法があるでしょう。パッと飛んだら、 次のコマでは落っこちてたり それを、 『うる星』ではやってみようということです。 それから、マンガの原作ではエピソードが不 足するので、話が原作以上にエスカレートす るものもあります。 合 勝平クンのひたむきさみたいなものを 見てください。それと秘技もいろいろ考えて いますからお楽しみに!

AN. どうもありがとうございました。

1982

October

Comment [for “Urusei Yatsura”, Animage]:

原作の高橋留美子さんの絵柄と自 分の絵柄がかけはなれていなかった ので、キャラ設定はあまりむずかし くなかったんです。けれど、そのぶ んどうしても自分流のかき方になっ てしまうんですね。キャラ作りのと きは絵のイメージを頭に入れて作り ますので、原作は参考ていどにしか 見ません。ラムのちがうところは、 トラじまパンツや髪の毛ぐらいで、 それも線を整理しただけなんですよ。 好きなキャラですか? ウーン、 男性では面堂で、女性はランちゃん、 かな。 面堂は行動がみえみえなとこ ろがかわい気があるし、ランちゃん は内面と外面のちがいがおもしろい ですね。

Comment [for “Urusei Yatsura”, Animedia]:

『うる星やつら』の女性キャラを描くと きに一番気をつけているのは、まず美人 の条件からはずれないように描くという ことですね。やっぱり美人を描くための セオリーってあると思うんですよ。プロ ポーションにしても、顔のバランスにし ても、目鼻の配置にしても。たとえば、鼻の格好でも下向けちゃうと 美人にならないでしょ。でも、もともと私は可愛いのとかきれいなの 描くの嫌いな方じゃないから、そんなに難しいとか描いててつらいと いうことはないですね。ただ、とにかくたくさん美人が出て来るので あまり似てきちゃわないように、細かいところで個々の雰囲気を変え るようにはしています。 ファッションなんかでは最新の流行をとり入れたりもするんだけど、 演出とのかね合いでなかなか難しいですね。私の趣味でいくと、一度 ラムちゃんにフラゼッタ調の格好(『コナン・ザ・グレート』に登場す るようなスタイル)をさせたいんだけど、そんな話ないですもんね。

November

Comment [for “Urusei Yatsura”, Animage]:

テレビシリーズは生きもので、キ ャラもしだいに変化します。 シリー ズ用のキャラシートと、放映されて いる実際のキャラとの間に、ズレが 生じてきているので、それを修正し て、現在のキャラにあわせたのが映 画用の新設定ということになります。 だから、現在放映中のキャラとのち がいはありません。ただ映画ではじ めて「うる星」を作画する人のため に、キャラシートはラムだけで8枚 も描きました。エルもクリーンナッ プのとき、マントをつけてみました。

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